成功者の悪口ばかり言う人にはどう声かけすればいい? 論理的思考力を磨くモギシケン/本当の頭のよさを磨く脳の使い方

暮らし

公開日:2022/12/9

 今日の正解が、明日は不正解かもしれない時代。不透明な世の中を生き抜くためには「本当の頭のよさ」が必要かもしれません。

 脳科学者の茂木健一郎さんは「情緒に流されない力」「地図を読み換える力」「アニマルスピリッツ」「妄想する力」の4つが「本当の頭のよさ」の源泉だといいます。

 『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』では、アインシュタインからイーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグまで、歴史に名を残す天才や世界的起業家たちを分析し、脳科学から「本当に頭がいい人」になる方法を解き明かします。

 思考実験「モギシケン」で、「相手が望むもの」を察するトレーニングを行ってみましょう。

※本作品は茂木健一郎著の書籍『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』から一部抜粋・編集しました

本当の頭のよさを磨く脳の使い方
『本当の頭のよさを磨く脳の使い方』(茂木健一郎/日本実業出版社)

モギシケン
「相手が望むもの」を察するトレーニング

Q 成功した人の悪口ばかり言っている人がいます。どのような声をかけてあげればいいでしょう?

次から1つ選んでください

①悪口の対象と同じように成功するアドバイスをする
②いっしょになって悪口を言って盛り上がる
③「悪口を言うのはよくないよ」と直言する

答え ①(4点/4点満点)

 

茂木健一郎のワンポイント解説

 どのコミュニティでも大体の場合、1人か2人、ずば抜けた成果を出す人がいます。それは会社でも、大学でも、研究所でも政治家でも同じ。世の中、そういうものでしょう。

 そして、どのコミュニティでも、それがおもしろくなくて成果を出した人の悪口を言う人が必ずいます。

 僕なんかも、ネットニュースの世界ではよく炎上したり悪口を書かれたりします。よく「茂木さん、大丈夫ですか」と心配されるのですが、結論から言うと大丈夫です!

 なぜなら脳の仕組みからすると「嫌い」は「好き」に非常に近い感覚だからです。

 感情の回路に関わる脳の器官に「扁桃体」があります。扁桃体は「大脳辺縁系」と呼ばれる情動に関連する回路を構成する部位で、「情動の中枢」です。

 怒り、恐れ、喜び、悲しみなどの感情の動きによって生じる体や心の反応を生み出すのが扁桃体の役割で、特に恐怖や不安といったマイナスの情動に深く関わっています。扁桃体の活動があまりに過剰になると、うつや不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に結びつくこともあります。

 

 扁桃体は、好き嫌いを判断する器官ですから、ほかの脳領域とも密接に関わり合います。たとえば「大脳新皮質」の「感覚野」「視覚野」「聴覚野」などとつながっていて、それらで得られた情報はすべて扁桃体に送られます。

 たとえば、「体が細くて大きな羽が4枚ある昆虫=蝶々を見たら鳥肌がたったので、蝶々が嫌いだ」などと、「転んだら血が出て感覚野が〝痛い〞という信号を送ってきたから嫌だ」とか判断でき、「服についている蝶々をとってほしい」と叫んだり、「痛いからバンソウコウを貼らなくちゃ」と判断できたりするのですね。

 

 この扁桃体が何かを判断するには、「採点基準」が必要になります。では、その採点基準をどうやってつくっているかというと、扁桃体は脳の「視床下部」と連絡をとっています。視床下部が感知した「対象物が本能的に有益か不利益か」の情報に応じて、好き嫌いを決定するのです。

 このとき、「好き」と「嫌い」は実はよく似た信号を送ってきます。

 お年寄りなどが「嫌よ嫌よも好きのうち」などと言うことがありますが、まさにあれです。「嫌い」の対極は「好き」ではなくて、脳科学的には「無関心」です。

 ですから、「あいつが嫌い」とばかり言っている人を見かけた場合、僕たちは「え、でもそれって、関心があるのでは」と考えるべきなのですね。もしかして、この人は「嫌い」ではなくて「うらやましい」のでは? それは「嫉妬」なのでは? と考えてみたほうがいい。

 

◉主語が「私」だと読み間違える

 主語がつねに「自分」の人は、悪口ばかり言う人と出会ったら、「私も悪口を言われたら嫌だな」と感じるでしょう。自分が言われないために、もしくはなんとなく同調しておくために「②いっしょになって悪口を言って盛り上がる」を選択するかもしれません。でもこれは「相手が望むもの」ではなく「自分の心」に忠実なだけですから、最悪ではないですが正解ではありません。2点です。

 

 「③悪口を言うのはよくないよ、と直言する」はどうでしょう? これはいわゆる空気を読まない行ないというやつですね。悪口を言っていた本人は気分よく話していたのに水を差された、と感じるでしょうし、あなたに批難されたように感じるでしょう。モギシケン云々以前に対人関係のマナーとしてあまりよいとは言えないので0点。

 正解は「①悪口の対象と同じように成功するアドバイスをする」です。その人は、要するにうらやましく、嫉妬しているのでしょう。いっしょになって悪口を言うのもはばかられます。でも真っ向からたしなめるのも大人げない。だとしたら「そうだねえ。彼は◯◯がうまいから。あなたもああいうふうにやってみるのはどう?」なんて、さりげなく悪口の対象の成功要素を示すのがよいでしょう。

 

 誰かが悪口を言っていたら、主語をその「誰か」にしてみてください。そうしたら、その人は本当は悪口の対象のように成功したいという願望を持っているのに気づいていない、ということが見えてきます。

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