デキる人は備えている!? 元防衛省分析官が教える頭の回転が速くなる「ダークスキル」

ビジネス

公開日:2022/12/9

超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル
超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル – 仕事で使える5つの極秘技術』(上田篤盛/ワニブックス)

 SNS、ウェブニュース、あらゆるところにフェイクニュースは満ちている。うっかり踊らされがちな世の中だが、できれば踊りたくはない。

超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル – 仕事で使える5つの極秘技術』(上田篤盛/ワニブックス)では、元防衛省の情報分析官であり、現在は危機管理等の専門家として様々な著書を執筆している上田篤盛氏が、ビジネスパーソン向けに“ムリ、ムダ、ムラ”を排除したシンプルで理にかなった「ダークスキル」を紹介している。様々な諜報員のスキルが、コンパクトにまとめられていて、とてもわかりやすい。

意外と普通かも……「諜報術」は身近なことから始まる

 諜報員と言うと、真っ先に思い浮かぶのはジェームズ・ボンドではないだろうか。かっこよくスーツを決め、敵と大立ち回り。ときには拳銃をぶっぱなし窓ガラスを割って飛び出す、といった派手なことを、実際の諜報員(スパイを含む)はしないという。もちろん暗号解読や、情報分析などの専門的スキルも必要だ。実は人の話をよく聞く、新聞やニュースの報道を見るなど、意外と普通のことも多い。

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 スパイ映画ではハッキングやデータを盗み出すシーンはおなじみだと思う。実は公になっている情報を集めるだけでも十分情報の輪郭はつかめるそうだ。

 例えば、“小説にドイツ軍の内部構造を詳細に書いた”ことで亡命した、医師のヤコブという人の話が出てくる。ヤコブは、ナチスにどうやって機密情報をつかんだのかと尋問された。

 しかし、結局のところ基となったのは公開情報。新聞などから拾い集めて、正確な機密情報を弾き出していたのだというから驚きだ。

人の話を聞くにはLOVEが必要? ブラックではない「ダークスキル」

 情報の重要性は増す一方で、フェイクニュースをつかんでしまったら出発点から間違える。「ダークスキル」はそういった悪意や深刻なミスから身を守る術でもあるのだ。

 記憶術の章も面白かったが、とりわけ人心掌握の章は、一生懸命に読んでしまった。一流の諜報員は聞き上手である。元FBIが書いた本によると重要なのは、

Listen
Observe
Vocalize
Emphasize

 の「LOVE」だそう。平たく言うと、アクティブリスニング(積極的傾聴)である。言うのは簡単だが、実行するのは難しい。

 会話術で特に興味深かったのが、都道府県1つにつき、関連する単語を50個言う訓練だ。広島県なら牡蠣、宮島など、とにかく関連していれば何でも良い。
 人は自分との共通点を見出した人に好意を抱きやすい。相手が日本の出身なら、大抵は縁のある都道府県を持つので、全ての都道府県で50個述べられるように訓練するのだとか。

 とは言え一般人では難しいので、10個程度で良いそうだ。これぐらいなら簡単にできるし、確かに会話をつなぐ強力なサポートになってくれそうだ。

 余談だが、全く別の本で小泉進次郎氏について「有権者と会話するためにおそらく全都道府県に絡めたエピソードを用意しているのでは」という推測を読んだことがある。こういうことか、と、とてもびっくりした。

 本書にはあらゆる情報がちりばめられている。どれが自分の参考になるのか、「分析」するのが「ダークスキル」を身につける第一歩になるかもしれない。

文=宇野なおみ