「会社に行きたくない」と思ったら…。“うつによる休職から復職まで”に特化した「休職の処方箋」

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更新日:2022/12/8

マンガでわかる 休職サバイバル術
マンガでわかる 休職サバイバル術』(加藤高裕:著、ミヨシ:漫画/主婦の友インフォス)

 本書で紹介されている調査によると、働く人の3人にひとりが過去3年の間にメンタル不調を感じたことがあるという。そして、1カ月以上に及ぶ休職のうち約3割が、精神疾患に由来する休職だそうだ。仕事は大変なものだとは知りつつも、こうしたデータからは、仕事とメンタルの状態は深く関連していることが改めてよくわかる。本書『マンガでわかる 休職サバイバル術』(加藤高裕:著、ミヨシ:漫画/主婦の友インフォス)は、そんな「うつと仕事」に関するテーマの中でも、「うつによる休職から復職まで」に特化した興味深い1冊だ。

マンガでわかる 休職サバイバル術 P58

 著者は、クリニックで診察にあたる一方で、企業の産業医として働く人のメンタルヘルスをケアし、うつによる休職や復職をサポートしてきた精神科医の加藤高裕氏。本書は、自身もうつ病による休職・復職を経験したデザイナー・漫画家のミヨシ氏が当事者への取材をもとに描いた漫画を交えつつ、メンタル不調の発生から心療内科の受診、休職の準備、休職中の過ごし方、そして復職・職場定着までの各ステップでの必要な行動や注意点などを、詳しく解説している。

 本書の特徴は、精神疾患治療のための休職ではなく、その後、仕事に戻って自分らしく働き続けることをゴールに据えていること。休職に必要な手順、休職中にもらえるお金など、メンタル不調による休職への不安を軽くする情報だけでなく、復職のための「リワークプログラム」や、復職面談時のコミュニケーション、復職後の働き方など、再び前向きに仕事に取り組むための方法を丁寧に伝えている。

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マンガでわかる 休職サバイバル術 P118

 その中で著者が強調するのは、メンタル不調による休職は、自分自身や、働き方を見つめ直すチャンスでもあるということ。ビジネスパーソンを多く診察してきた著者によると、会社でのキャリアアップに響くからと、メンタル不調による休職をためらう人が多いそうだ。しかし、休むことや、自分の考え方の癖や特性を見つめ直す支援プログラムを通して、自分が不調に陥った要因を取り除き、新しい働き方や生き方を選んで歩き出した人もいるという。

 たとえば、向いていると思っていた営業の仕事が、自分に負荷を与えていたと気づき、職種を変える。または、キャリアアップではなく、キャリアダウンによって充実感を得られる生き方を手にするなど、立ち止まらなければ見出せなかった選択ができた人もいる。本書を読めば、休職は必ずしもキャリアの中断ではなく必要なステップであり、人生という長い視点で見ると、心がしんどくても仕事をがんばり続けることが正解ではないことがよく理解できる。

マンガでわかる 休職サバイバル術 P184

 また本書は、メンタル不調を本格的に治療したい人だけでなく、ストレス社会で働くすべての人に役立つ情報も豊富だ。メンタル不調に陥りやすい人の特徴や、4つの性格タイプ別のよくあるストレス要因などは、知っておくと、深刻な不調や休職に至る前に対処ができそうだ。どんなときに心療内科へ行けばいいのか、心療内科の選び方、休職するか否かの判断基準など、いざという時に役立つ知識も多い。コロナによる環境変化、テレワーク中の孤独など、仕事のストレス要因が多様化するこの時代に、自分らしく働き続けるためにチェックしておきたい1冊だ。

文=川辺美希