日常生活にすぐ取り入れられる“学びのきっかけ”が満載! 現役開成高生が振り返る、学びを遊びに変える方法
公開日:2022/12/18
我々大人世代が子どもだった頃と比べて、格段に受験者数が増えている中学受験。2022年に首都圏・私立中学を受験した受験者数は5万1100人と史上最多を記録しました。早い子は低学年から塾に通い、直前期には遊ぶ時間はもちろん、習い事も辞めて机に向かう日々……。中学受験についてそんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか? しかし本書『偏差値40台から開成合格! 自ら学ぶ子に育つ おうち遊び勉強法』(ぎん太/講談社)の著者・ぎん太さんは小学6年生の秋まで一切塾に行かず、男子御三家中学のひとつ、開成中学に合格。本書はなぜ塾に行かずに難関校に合格できたのか、合格者本人である現役高校生のぎん太さん自身が幼少期からの勉強を振り返るという珍しい一冊です。
勉強法、と言っても本書の内容の多くは机に向かって行うものではありません。「いかに楽しく遊び感覚で脳を鍛えたり、知識を身に着けるか」に注力した、ぎん太さんのお母さんの取り組みが紹介されています。
まずぎん太さんやそのご兄弟が小さい頃からよくやっていたのは、パズルやかるた。遊び感覚で旧国名や星座などを覚えたそうです。他にもあらゆる部屋に日本地図を貼ったり、お風呂の時間に九九や元素記号、歴史年表の歌のCDをかけたり。その時完全に覚えていなくても、見たことがある、聞いたことがあるというだけで暗記にかかる時間は格段に違うとぎん太さんは言います。さらに移動時間に語彙力向上ゲーム(最後に「的」がつく言葉などしばりを設けて言えなくなった方が負け、というゲーム)をしたりと、紹介されているのは日常の中、ゲーム感覚でできるものばかりです。
もうひとつ、ぎん太さん家族が大切にしていたのは“体験”です。子どもたちが疑問を持つと、すぐに調べて教えてくれたというお母さん。さらにその興味を広げるような科学館や博物館、地方の物産展などにもよく連れて行ってくれたことが、理科や社会の知識を広げることに繋がったとのこと。と言っても、お母さんが連れて行ってくれたのは勉強に直結するからではないようで、ぎん太さんがポケモンのカードゲームにハマっていたときは、遠くでやっている大会に連れて行ってもらったことも。「勉強のために行く」のではなく、「子どもの興味を広げたり、好きなものを楽しむ」という姿勢のおかげで、ぎん太さんたちは広く好奇心を持ち、結果的に知識をつけることができたのかもしれません。
しかし中学受験するとなれば、いつかは机に向かって勉強しなくてはなりません。その時お母さんがしたことは、ぎん太さんが“勉強は楽しい”と思えるような働きかけ。「勉強はつまらないけど、将来のためにやらないといけない」と思うよりも、「知らなかったことを知るのって楽しい、物知りな人はかっこいい」と思った方が、勉強に対するモチベーションは上がります。ぎん太さん曰くお母さんは勉強が苦手だったそうですが、だからこそ子どもたちが勉強に苦手意識を持たないような声掛けをしたり、覚えられない部分をクイズにして出題したり。いわゆる“お受験ママ”というと、子どもを机に向かわせるよう叱咤激励するイメージがありますが、ぎん太さんのお母さんはそうではなく、子どもの「知りたい、わかりたい」という気持ちを最大限にサポートしている印象を本書から受けました。
その他本書では、ぎん太さんおすすめの知育玩具や本、家庭学習教材なども紹介。すべては真似できなくとも、「ちょっとこれやってみようかな?」と日常生活にすぐ取り入れられる要素が満載の一冊です。
文=原智香