「自分のルールを決めろ」9300万円馬券を当てたお笑い芸人の「ブレない」心の秘訣
更新日:2022/12/24
お笑いコンビ「インスタントジョンソン」のボケ担当・じゃい氏は、麻雀やギャンブルでも広く名が知られている。
2013年の麻雀最強戦・著名人代表決定戦の連覇、2020年のトリプル馬単(指定された3つのレースで、1着と2着の馬番号を着順通りにすべて当てること)で6410万6465円的中、2022年のWIN5(同様に、指定の5レースの1着をすべて当てること)で9370万6710円的中など、さまざまな実績を数え、自身のYouTubeチャンネルやニコニコチャンネルでも競馬や麻雀を中心に情報発信を続けている。また、過去には『勝ち方がわかる 馬券の教科書』など、5冊のギャンブル・競馬系の本を出版してきた。
本書『稼ぐメンタル ギャンブルで勝ち続ける「ブレない」心の作り方』(KADOKAWA)も、そのような系譜に位置付けることはできるだろう。ただ、本書がいわゆるノウハウ本と一味違うのは、ギャンブルの技術よりも、むしろより根底にあるメンタルに注目し、その強化を重視している点にある。そして、本書で推奨されるメンタルのあり方は、ギャンブルのみではなく、仕事や恋愛、日常生活全般においても有用なものとなっている。
たとえば、競馬においては「上手に『見』をするのが勝つ秘訣」なのだという。競馬においては、「買わなかったレースが当たってしまったらどうしよう」という不安から全レースの馬券を買う人が少なからず存在することを述べた上で、何かしらの勝算のないレースは「見(送り)」をするべきだと語る。じゃい氏は、「見」をしたレースが的中する可能性自体は否定しないものの、トータルで考えれば、自分が自信の持てないレースに賭ける方がマイナスになることを示唆し、目先の勝ち負けに動揺しない意識を持つべきだと強調する。
この教えは、麻雀における「メンタルが原因で鳴くな」という教えにもつながる。鳴き(他の人が捨てた牌をもらって、自分の面子を揃えること)は麻雀において非常に重要で、かつ、一概に「正しい鳴き」と「正しくない鳴き」を判断することは難しい。しかし、ゲームに臨むうえでは、鳴く/鳴かないは自分の軸を持ったうえで判断するべきだとし、その時の心の調子から、勢いで決めるべきではないと語る。
じゃい氏は個々の麻雀やギャンブルにおけるメンタルの重要なあり方と同時に、そもそも「ブレない心」を手にするために必要なことについても語る。その中で挙げられる「自分のルールを決める」という教えは、先述のふたつの教えの根幹にあるものだろう。ほかにも「ロジカルに考える」「心の疲れを取る」といった教えは本質的で、ギャンブルをやらない人にとっても、その仔細を読み進めることには確かな意義があるはずだ。
じゃい氏は今年の3月、競馬の払戻金に対する巨額の追徴課税を負わされ、結果として自己破産を余儀なくされたことも話題となった。税務署のこうした決定の是非については、さしたる法律の知識もない私がどうこう言えることではない。ただ、じゃい氏に倣えば、こうしたリスクからギャンブルを一概にダメだと思い込むのではなく、より長い視野で考えることが必要な態度でもあるだろう。じゃい氏はこの出来事を経てもなお、「競馬界、競馬ファンの想いを背負っている自分が競馬をやめるわけにはいかない」と最後に決意表明をする。それはまさに「ブレない心」を全身で体現するかのようで、思わず勇気づけられる。
文=若林良