地道な「分解思考」が近道!? 新年に成し遂げたい目標を実現させる方法
公開日:2022/12/31
年末年始ということで「2023年はどんな年にしたいか」「今年の漢字を一文字で」などといった話題に触れた方は多いのではないかと思います。「どんな年にしたいか?」「漢字一文字で」という聞かれ方だと抽象的になってしまいがちな回答を、せっかくなのでとことん具体化してみてはいかがでしょうか。ご紹介する『小さく分けて考える―「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考』(菅原健一/SBクリエイティブ)は、それを可能にしてくれる一冊です。
著者の菅原健一氏が専門とするのは「壁打ち」。経営者を相手に、悩みと課題をヒヤリングし、どのようにその後の舵取りをしていけばよいのかを助言するアドバイザー業で、その仕事を仮に時給換算すると30万円とのことで、プロ中のプロということになります(経歴欄では、社会や企業内に存在する「難しい問題を解く」専門家と表現されています)。
菅原氏が本書で紹介している持論の一つに「何かを行うためのエネルギーは自分の中からしか湧いてこない」というものがあります。これは言い換えるならば、モチベーションを自ずと湧かせるには理想や目標を細分化していって、そのひとつひとつに向き合うことによって、いつの間にか目的地に近づいていることが理想的だということです。
「分解する地道さ」を会得できれば目標は達成され、さらなる進化は自ずと誘発されるという観点から、Googleも導入しているOKR(Objectives and Key Results)と呼ばれる指標について、「目的と、主要な成果」と直訳されがちなところを、本書では「目的と、目的に到達するためにカギとなる目標」と意訳されているのが興味深いところです。どのようなスタンスの違いがあるかというと、前者は「目的達成」が「成果」だと見なしているのに対して、後者は「目標の具体化」がおこなわれた時点で「成果」が出始めていると見なしています。
このような「分解思考」を基軸にすると、アイデアの出し方にも変化が出てくるといいます。たとえば、パッと直感的にすごく良いことを思いついたとしましょう。多くの場合、その考えを軸に誰かを説得するとなると、さらに論拠・確証や具体性が必要となります。著者は直感的なアイデアを大事にしつつ、つねに「反対」を考えることで足りないピースを割り出して、「斬新さ」に「無難さ」をミックスさせるクセをつけているといいます。
あえて面白い企画の反対を考え、堅実な企画という視点を見つける。堅実な企画に含まれている要素を分解していくと、面白い企画にも必要不可欠な要素が見つかります。
面白い企画に、必要な要素を加えれば、最初に思いついた企画が磨かれます。
「目標を大きく持つこと」も本書で推奨されていますが、大きな目標を達成することよりも「視点を上げる」という過程の重要性を知っておくべきだと説かれています。「視点」が細分化されることで、栄養分が体内を循環するように一挙手一投足に還元されていくためです。
こうした「構造」がわかった人に対しては「順番」の手引きも準備されています。深い思考には、自分一人では到達できないこともありますが、考える順番に用心してルーティン化していけば、悩む時間や無駄な苦労がなくなるといいます。たとえば、あるサービスの収益化手段として「広告をつける」ということを基軸にする場合、まずサービスを浸透させるのと、広告をつけて運営体制をしっかりさせるのと、どちらがいいのかというトピックが本書では例に挙がっています。
ユーザーが減ると、売上が減少します。その売上を補おうとして、また広告を増やすと、ユーザーはさらに離脱します。ビジネスモデルのせいでサービスモデルが劣化してしまうわけです。
これとは逆に、サービスモデルがよいからユーザーが増えていき、ユーザーに負荷を感じさせない範囲で広告を見せるというのがよいビジネスモデルです。
ビジネスモデルにとって広告の増加はリスクであると把握し、サービスを良くしてユーザー数が伸びてから広告を導入する。一見すると「なんだ、当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、膨大な情報の中の複雑な事象の渦中にいるときに、「分解」する思考回路が頭の中にしっかり敷かれていないと、見誤ることが往々にしてあるというのが著者の考えです。
「2022年にあったこと」「2023年にあってほしいこと」を細分化しながら、日々の仕事や暮らしの解像度を上げて、理想を実現させる準備をしてみてはいかがでしょうか。
文=神保慶政