渡邊圭祐さんが選んだ1冊は?「野宮朋美の言葉は、格言として僕の心に刻まれています」
公開日:2023/1/13
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、渡邊圭祐さん。
(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)
井上雄彦作品が大好きという渡邊さんは、『SLAM DUNK』に憧れバスケットボールを始めたという。その後ハマったのが、車いすバスケを題材にした『リアル』だった。
「全員主人公というくらい、登場人物がみんな魅力的です。彼らの人生が交錯して、それぞれに成長して。彼らの物語は、僕の生きる上での糧になっています」
なかでも好きなキャラクターは?
「野宮朋美です。取材でよく『今を生きるのが大切』って答えているんですけど、実はそれは彼の言葉なんです。『今を生きることにした』っていう。今がたとえつまらない場所でも、今を生きればいつかは必ず自分のゴールにつながる。格言として心に刻まれています」
しかし演じてみたいかというと、野宮は憧れが強すぎて僕にはできません、と渡邊さん。
「もし演じるなら戸川清春か高橋久信。最低1年はしっかり練習して臨みたいです」
『SLAM DUNK』では?
「三井寿が好きだし、演りたい。前歯もそのためなら抜きますし、あのロン毛は絶対僕にしかできない、と勝手に思っています(笑)」
2月には、渡邊さんの出演舞台『アンナ・カレーニナ』が幕を開ける。出演が決まってから、トルストイの原作はすでに何作か読んだ。「やはりこれも人生が交錯する物語」と渡邊さんは言う。「アンナの物語をいろいろな人の物語が横切っていく。そこにすごく引き込まれます」
アンナを演じるのは宮沢りえさん。渡邊さんの役どころは、アンナと不倫の恋に落ちる若き貴族の将校アレクセイ・ヴロンスキーだ。
「宮沢さんと共演させていただけるなんて光栄です。宮沢さんの魅力を存分に浴びて吸収して、成長できたらなと思います。同時に、きちんと対等に舞台に立てるように頑張らないといけないです」
フィリップ・ブリーンによる演出も「ワクワクする」と渡邊さん。フィリップは今回、破滅に向かうアンナの愛と、未来への希望を感じさせるアンナの兄の友人・リョーヴィンとキティの純愛を、対照的に描きたいと述べている。
「30歳になる年に、ヴロンスキーという役をいただけたのは本当に嬉しいです。彼の若々しい情熱的な愛、そしてそこから堕ちていく精神の荒廃を、きちんと表現したい。僕がヴロンスキーを演る意味を、見いだしていければと思っています」
わたなべ・けいすけ●1993年、宮城県生まれ。2018年、『仮面ライダージオウ』でドラマ初出演。主な出演作に、舞台『彼女を笑う人がいても』、映画『ブレイブ 群青戦記』『鋼の錬金術師 シリーズ』『ブラックナイトパレード』。現在『私のシテくれないフェロモン彼氏』(TBS)が放送中。23年は、映画『恋のいばら』『わたしの幸せな結婚』に出演。
『リアル』(全15巻) 井上雄彦 ヤングジャンプC 715~748円(税込) 中学時代は短距離選手だったが、骨肉腫で右足を切断した戸川清春。車いすバスケと出会い、「パラリンピックで金メダル」の夢を抱く。バイク事故で夏美を下半身不随にしてしまい、罪悪感に苛まれる野宮朋美。トラックに轢かれ脊髄を損傷した野宮の同級生・高橋久信。3人の男たちの生き様を車いすバスケを通して描く。
舞台『アンナ・カレーニナ』
原作:レフ・二コラエヴィチ 上演台本・演出:フィリップ・ブリーン 出演:宮沢りえ、浅香航大、渡邊圭祐、土居志央梨、大空ゆうひ、梅沢昌代、梶原 善、小日向文世ほか 2月24日(金)〜3月19日(日)、東京・Bunkamura シアターコクーン 3月25日(土)~27日(月)、大阪・森ノ宮ピロティホール ●トルストイの名作をイギリスの気鋭の演出家フィリップが新解釈で戯曲化・演出。破滅に向かうアンナの「愛」と、未来への希望を感じさせるリョーヴィンとキティの「純愛」を対照的に描く。