よくある8桁パスワードの組み合わせは何通り?―― 実は3兆近く!? 脳が混乱する、感覚と現実のギャップ
公開日:2023/1/17
詳細な数字が必要でない場合、普段は何気なく“勘”に頼って行動することが多い。「たぶん○円くらいだよね」とか「これくらいの確率かな~」とか、根拠がありそうでない“思い込み”で生きている。でも実は、この思い込み、思った以上にずれているかも……?
『直感とちがう数学』(葉一:監修、タカタ先生:原案、カシワイ:イラスト/Gakken)は、そんな、脳による直感と現実とのギャップに驚かされる“ズレ”を体験できる本。本書は、YouTube登録者数180万人超えの人気チャンネル「とある男が授業をしてみた」を手掛けている葉一さんと、数学教師とお笑い芸人の二刀流で活躍するタカタ先生の協力タッグで制作されている。
8桁パスワードの組み合わせは、2兆8211億990万7456通り!?
教育者 2人が「直感とちがう」としているだけあって、「はじめに」の段階で既に驚かされる。まず「はじめに」で挙げられているのは、ネット上でのログインに欠かせないパスワード。数字とアルファベットを組み合わせた8桁以上で設定してください、という一般的なものだ。この8桁のパスワード、何通りくらいあるんだろう?と考えたことはあっても、正確な答えを確認したことがある人は少ないはず。筆者も、数千万くらいかなと思っていた。
しかし実は、答えは2兆8211億990万7456通り! 大文字小文字を分けると、なんと約218兆通りにもなるらしい。もはやこの数字自体が大きすぎて、「なるほど!」と納得することすら難しい。2人によると、数学はこうした“ズレ”の宝庫なんだそう。
答えを知ると脳が混乱する!? 不思議すぎる答えに驚愕……
この本では、こうした「嘘でしょ?」と言いたくなる数学が、クイズ形式で次々と展開される。例えば、「母の日のプレゼント」。母の日に父、兄、私、妹の4人がそれぞれ、12種類の中から異なる3種類の花で花束を作る際、家族が同じ花を選んでもいい場合、花束の作り方は何通りあるかという問題。
4人で、12種類の花から3種類選ぶ。これだけ見るととてもシンプルで、よく分からないけど多分数百くらいかな、と思ってしまう(筆者は思っていた)。だが答えは、約23億通りと想像を絶する数。
え、このやさしい数字から「億」なんて数が飛び出すって嘘でしょ? 花屋で普通にありそうな光景なのに? と、花屋に潜む底なし沼に囚われた気分だ。
他に「そんなことある!?」と思ってしまったのが「軽くなるスイカ」。99%が水分でできている1000gのスイカの水分が抜け、水分が98%になってしまった場合、スイカは何gになるか、という問題。
99%が98%になった、つまり1%減っただけ、しかももともとの1%は水分ではないわけだから、誤差程度にしか変わってないはず! そう思ったが、答えはなんと500g。
1%しか減ってないのにまさかの半分……。それなら、90%くらいになる頃にはスイカは消えるのでは? と、まったくもって意味が分からない。正直、解説を読んで数字を見せられて頭では理解しても、「いやでも何やかんやでもうちょっとあるでしょ!?」と全然納得できなかった。筆者の脳内と現実がこうも違うとは……。
上の2問は本書のほんの一部にすぎず、「同じ誕生日のペアがいるのは?」や「お菓子の配り方」「コーヒーとミルクの割合は?」などまだまだ脳を混乱させてくる問いが続々と登場する。また、これらの問題は4月から3月までの1年になぞらえて作られていて、12ヶ月分のストーリーとして楽しみながら読み進められるのも嬉しいポイント。見るだけで癒される愛らしいイラストが、“ズレ”によって乱される心と脳を鎮めてくれる。
新年度を迎える前に、この『直感とちがう数学』で脳に刺激を与え、自分の中の常識や感覚を見つめ直してみるのもアリかもしれない。
文=月乃雫