破天荒な姫と孤独な獣人の王との異種族恋愛ファンタジー! 過酷な運命に立ち向かうふたりの未来は? 小説『貢がれ姫と冷厳の白狼王』
公開日:2023/1/18
野獣の王子と心優しい少女の純愛ラブストーリー『美女と野獣』。孤独な野獣が少女の優しさで人間らしさを取り戻し真実の愛を見つける物語は世の女性たちの理想の愛の形だろう。今回紹介する『貢がれ姫と冷厳の白狼王 獣人の万能薬になるのは嫌なので全力で逃亡します』(惺月いづみ:著、駒田ハチ:イラスト/KADOKAWA)も、そんな人間の少女と獣人の王との異種族ラブストーリーだが、心優しいだけではないヒロインのパワフルな行動力や大胆な発想に驚かされる。
人知れず森の奥で育てられた主人公・ニーナは、15歳の誕生日に突如現れた隣国ウルズガンドの獣人たちに連れ去られ、人間の国の王女であることを明かされる。血肉を食らうと万病が癒え強大な力を得られると伝わる《贄姫(にえひめ)》として、冷酷な白狼王ヴォルガへ貢がれたニーナ。だが彼女は自由と引き換えにヴォルガに取引をもちかける……。
獣人にとって万能薬となる《贄姫》として、両国の条約の元、獣人の国ウルズガンドに囚えられたニーナ。
獣人に食べられるために連れ去られたお姫さまと聞くと、まさに悲劇のヒロイン。だが、ニーナは白馬に乗った王子様の助けを待つだけのか弱いお姫さまではなかった!
幼い頃より養父から狩人としてサバイバル術を叩きこまれたニーナは、自力で拘束から抜けだして獣の徘徊する森を駆け抜けたり、看守を倒して牢屋から脱獄し冬の湖を泳いだり、あらゆる手を使って屈強な獣人の追跡すらも逃げ切ってしまう。たった一人でも窮地をくぐり抜けてしまう、なんとも破天荒なお姫さまだ。
そんなニーナでも巨大な狼に変身できるヴォルガからは逃れられず、毎回捕まっては牢屋に連れ戻されてしまう。ヴォルガは獣人たちの中でもひときわ強い獣気を持って産まれ、人間の国との戦争では何人もの兵士を屠ってきたとされる冷徹な王だった。
彼がどうして《贄姫》を求めるのか? それは不治の病に侵された妹姫ハティシアのためだった。ハティシアを生かすため、ニーナに血肉を捧げることを命じるヴォルガ。しかしハティシアは誰かの犠牲で生き永らえることを拒む、心優しい少女だった。
ただ死に向かうハティシアの手をニーナが取ると、思いがけず己の中で眠っていた癒やしの力が目覚め、ハティシアは一命を取り留める。これが《贄姫》の力だと気づいたニーナは、ハティシアを救うことと引き換えに自分の身の自由をヴォルガに約束させる。
ニーナの尽力によって次第にハティシアの容態は回復していく。ニーナに恩義を抱いたヴォルガは約束を果たすため、国の重臣たちを相手にニーナの解放を訴える。どんな獣人の戦士よりも優れた弓の腕前を持ち、自分と対等に向き合うニーナに、いつしかヴォルガは惹かれていく。恐ろしく冷酷に見えても孤独や葛藤を抱えるヴォルガの意外な一面に触れ、ニーナにとっても特別な存在となっていく。
人間と獣人の国の平和のために協力するふたりだが、やがてウルズガンド内で暗躍する陰謀に巻き込まれていくことに……。
見た目や人種の垣根を越えた真実の愛は、いつの時代も心をときめかせてくれるものだ。そして誰かの助けを待ったり頼ったりするだけでなく、自分の力で過酷な運命を切り開き幸せを掴む、新時代のヒロインの活躍に胸が躍るはず。
王道を超えた新感覚のキャラクターたちの美女と野獣の恋愛物語に、きっとあなたも虜になってしまうだろう。
文=愛咲優詩