日々の小さな幸せが宝物のように感じられる、心地いい作品『特別じゃない日』/斉藤朱夏のしゅか漫画⑬
公開日:2023/1/21
特別って何だろう。考えてもイマイチわからない。
私にとっての特別、貴方にとっての特別。
人によって特別はみんな違うのかな。
今回紹介するのは、稲空穂先生の『特別じゃない日』(実業之日本社)。
ふとしたきっかけで繋がっていく小さな街の小さな幸せのお話。
この本と出会えてよかったと心から思った。
優しくて、包み込んでくれて、温かくてとても心地よかった。
同じような毎日だとしても、全部が一緒ではなく、ほんの少し違ったりもする。
その中でふと感じる幸せ。
その時は何も思わなくても、
過去を振り返った時に記憶に色濃く残っていたり、意外と脳の片隅にポツンといたりするのだ。
コロナ禍になってしまってから、なんてこともない日常が
一番幸せだったんだなと改めて思い知らされた。
ご飯を食べることや人と会話したり、外でおもいっきり大声で笑ったり、
そんな日常としては当たり前のそんな一日が。
「普通」をあまりにも当たり前と思っていたんだなって
改めて毎日に感謝をしようと思った。
私たちはいろんな縁で繋がってまた新しい空間で生きて
常に小さな幸せを感じることで毎日を更新していっているのかもしれない。
その小さな幸せがきっとこれから走っていく未来を
目には見えない宝物だらけで埋め尽くしていくのだろう。
今日はなんだかちっぽけだったなって思っても
宝物で埋め尽くされた自分を想像したら、そんな日もあっていいやって気持ちになる。
作品の中でもお気に入りのお話は「知らないきみ」という話。
この話を読んで、人はその場その場で見せる顔が違うよなぁ〜と共感した。
家族といる時の私、友達といる時の私、ステージに立っている時の私。
色々な顔を持っているけど、どれも一緒ではあって
その時の空気によって人は雰囲気も変わるから色々な顔があるのかもって。
いつもとは違う表情が垣間見えると嬉しくて、
「この人はこんな顔も持っているんだ」って新しい発見にもなるし
もっと違う表情を見てしまいたいとも思う。
人のさりげない表情でも、幸せな感情を持てる。
こうして私たちは小さな幸せで毎日を送っている。
小さな幸せを噛み締めながら毎日をじっくり味わっていきたい、
そう感じさせる幸せに溢れた一冊。
第2巻『特別じゃない日 猫とご近所さん』もまた違う幸せがある。
今日は少し疲れたなと思った日に読んでほしい作品だ。