「最後に笑うのは私、がモットー」義母vs.嫁の壮絶な戦いを描いた実話コミックエッセイ『義母クエスト』原作者・かづさんインタビュー
公開日:2023/2/8
もうすぐ還暦を迎える主婦ブロガーのかづさんが、結婚当初から始まった義母との戦いを振り返って書いた実話コミックエッセイ『義母クエスト~結婚したらいきなりラスボス戦でした~』(かづ:原作、赤星たみこ:漫画/KADOKAWA)。義母の強烈な嫌がらせの数々が怖すぎる!と今話題の1冊です。原作者のかづさんに作品に込めた思いを聞きました。
――かづさんは19歳で結婚して以来、長年にわたって義母からの嫌がらせを受けてきたそうですが、この戦いについて書こうと思ったきっかけを教えてください。
かづ:もともと個人ブログで、義母について書くことがたまにあったんです。すると、「うちも一緒です。同じことを義母にやられました」という共感のコメントをちらほら頂くようになりました。令和の時代になっても嫁いびりは健在なのね……と感じていた時に、「毎日が発見ネット」で連載の話を頂いて、私の経験が少しでも誰かの役に立てばと思い、嫁時代の苦労を長編で書くことにしました。
――義母の嫌がらせは本当に壮絶で、読んでいて胃がヒリヒリします……。
かづ:ふふっ。当時ママ友たちとの井戸端会議で、私が義母のことを話しだすと、皆さん絶句して、たいそう驚かれていましたね。私自身は「あぁ、それほどうちの『嫁いびり』はすごいんだな」とそこでようやく自覚したというか(笑)。
――若くして結婚を決めた当時の心境はいかがでしたか?
かづ:私は自分が結婚に向いているとは思っていませんでした。看護学校では卒業後の希望就職先アンケートに「青年海外協力隊」と書いたくらい、外の世界で活躍したい気持ちが強く、私の人生に「結婚」だけはないと思っていたくらいです。
ところが勤務先の病院で出会った夫から熱烈にアタックされて、「愛するより愛される方が幸せになれる」なんて言葉が頭をよぎっちゃったんですね(笑)。それに、たとえこの先離婚したとしても、数十年後の同窓会で「一度は嫁に行った」と言えるからという邪な気持ちもあって結婚を決めました。
――結婚する前にも両家の親同士で一悶着があったようですね。
かづ:ええ。結婚するにあたって両親同士が挨拶する際にいろいろとすれ違いがあり、両家のバトルに突入してしまいました。もう始まる前から前途多難!
そんな状況を打破するにはもう妊娠するしかないと、「できちゃった結婚」ならぬ「作っちゃった婚」を思いついたんです。ばかですよね。浅はかだわぁ……。
当時、夫の「一生大事にする! おふくろからも守る!」という言葉を信じていたので不安はなかったんですが、「こんなにも早く裏切るか?」と自分の見る目のなさに驚き桃の木でした。
――冷蔵庫の中身について義母から詰問されるシーンには狂気を感じました……。
かづ:料理を教えてくれるわけでもなく、やりくりのコツを伝授してくれるわけでもなく、とにかく私のアラを探すためだけに、延々と冷蔵庫の中身を報告させられましたね。
私も義母からの電話に備えて、次は言われないようにしようと頭を働かせるわけですよ。するとそれはそれで義母からしたら気に食わない。私が頑張れば頑張るほど嫁いびりの度合いが増し、頑張らないとここぞとばかりに嫌がらせが始まる……その繰り返しでした。
義母はどうやってイビッてやろうかと毎日ウキウキだったと思いますよ。でも「諦めたらそこで試合終了」ですからね(笑)。
――ひどい仕打ちを受けても離婚の選択肢を取らず、「私なら乗り切れる!」と戦い抜く選択をしたのはなぜでしょうか?
かづ:基本的に私はこの上ない「負けず嫌い」なんです。今も昔もそうなんですが、自己肯定感が高いんですね。私なら絶対になんとかクリアできると思っちゃうんです。
私自身悪いことはしていないという認識だったので、ここで離婚して「尻尾巻いて出て行った!」と義母に吹聴されるのは悔しいんですよ。
それに息子たちの父親としてこの男を選んだのは私なので、任命責任じゃないですけど、最後まで私が引き受けたろうかなと(笑)。
――義母と戦い抜く決意をしたとはいえ、つらくて落ち込んでしまうような日もあったかと思います。そんな時は、どうやって気を持ち直していたのでしょうか。
かづ:先ほど自分は自己肯定感が高いと言いましたが、ハタチそこそこで義母から嫌がらせの数々を受け、夫からも否定的なことを言われ続けると、「あれ? おかしいのは私?」と思えてくるんですよ。
そんな時は鏡の中の自分に向かって「あんたは悪くない!」と自分で自分を励ましていました。外から見たら変ですよね。
でもそうしていると、「そーやんな! 私が悪いんやないよな!」と思えてきて、「よしっ!どっからでもかかって来んかい!」って気になりました。あははは!
――ご自身の体験が『義母クエスト』という漫画になって、どのように感じましたか?
かづ:自分で言うのもなんですが、よくこんなことを乗り切ってきたもんだと思いました。若いってすごいですよね。
毎回漫画を読みながら、「赤星先生、その場にいたでしょ!」って思っています。それくらいリアリティーがあって、「そうそう! こんなだった!」と思わず口から出ちゃいます。
――『義母クエスト』で気に入っているのはどんなところですか?
かづ:漫画家の赤星先生が原作をそのまま受け止めてくれているのを感じるところです。ママ友たちに義実家の愚痴を話すと、「ほんとに? うそ~?」と信じてもらえないことが多々ありました。
「いくら嫁でもそんなことまでする義母っているの?」と、盛り盛りの作りのように言われたこともあります。昭和の時代には姑の「嫁いびり」って本当によくあることでしたが、令和時代のお嫁さんから見れば、信じられない話も多いのでしょう。
でも、赤星先生とお話しさせていただいた際に、「あぁ、あったあった。昔はそんな話よくあったよねぇ」と言ってくださったのでとても安心しました。
そして『義母クエスト』のかづはかわいくてスマートなのがうれしいというか後ろめたいです(笑)。
――長年のバトルが終結し、自由な時間を持てるようになった現在のかづさんですが、当時を振り返ってみて、どんなお気持ちですか?
かづ:「最後に笑うのは私だ!」が私のモットーです。現在、楽隠居生活を迎えられているのは、これまで着々と重ねてきたものがあるからだと思っています。
どうしたら自分に有利に離婚できるのか必死で調べたこともありましたし、夫が全て私に丸投げだった義両親の介護にしても、どこに手続きに行けばいいのか、何を申請すればいいのかなど、すごく詳しくなりました。
実績と経験を積み重ねてきたことが自信にもつながっているからこそ、今、笑って話せるんだと思います。
――最後に、今現在、嫁姑問題で悩んでいる人にメッセージをお願いします。
かづ:ひとつ言っておきたいのは、私自身は離婚をしていませんが、決して離婚を否定しているわけではありません。ただ、離婚をするもしないも、どちらにしても「備える」ことは大事だと思います。
タイトルの『義母クエスト』のとおり、ゲームの中で冒険するためには「おなべのふた」と「ひのきのぼう」だけではすぐにやられてしまいます。経験を積んで武器や装備をととのえて、宿屋で体力を回復したり、道具屋で薬草を買ってからボスキャラと戦ったりしますよね?
リアルでも同じく、今すぐに勝利することだけを考えるのではなく、先を見越して行動し、その経験を自分の血肉にしていけばいいのです。
そして敵は異常なほどこちらのHP(ヒットポイント)を削ってきますので、自分の限界値を過信せず、時として「逃げるが勝ち」も大事です!