「女子は理系に向かない」「いい学校にいけばいい仕事につける」こんなアンコンシャス・バイアス=無意識の思い込みから脱却する2つの方法

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公開日:2023/1/26

思い込みにとらわれない生き方
思い込みにとらわれない生き方』(坂東眞理子/ポプラ社)

「アンコンシャス・バイアス」という言葉を聞いたことがあるだろうか。最近、よくメディアでもとりあげられるようになってきたが、「無意識の思い込み」を意味する言葉だ。たとえば森喜朗氏の「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」発言などはその極端な例だが、ほかにも「女子は理系には向かない」とか「いい学校にいったほうが将来いい仕事につける」とか、なんとなく一般的に「そういうものだろう」と思われていることも立派なアンコンシャス・バイアスの一例だ。

「思い込み」というとちょっとやわらかく聞こえるが、要は「偏見」のこと。「いやいや〜私にはそんな偏見なんてない!」と思うアナタ、実はそうやって「ない」と思い込んでいることも、アンコンシャス・バイアスの一部だったりするので、ややこしい。おそらく多かれ少なかれ誰もが何かしらのアンコンシャス・バイアスを持っていると考えられるが、無意識のことだけに、なかなかそれに自分で気がつくのは難しい。でも無自覚なままでいたら、結果的に誰かを傷つけてしまうことだってあるかもしれない(たとえば、「女の子はおとなしいほうがいい」と思うお母さんが、活発なタイプの娘さんを従わせたらどうだろう?)。

 そんな社会に警鐘を鳴らすため、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さんの新刊『思い込みにとらわれない生き方』(ポプラ社)は、このアンコンシャス・バイアスにまっすぐ切り込む。どうして人はアンコンシャス・バイアスを持ってしまうのか、日本人をしばるアンコンシャス・バイアスにはどんなものがあるのか、どうしたらアンコンシャス・バイアスにとらわれずに生きられるのか――さまざまな角度で思い込みからの脱却を指南してくれる一冊だ。

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 坂東さんによれば、アンコンシャス・バイアスが起こってしまう原因は大きく2つあるという。ひとつは「自分のこれまでの経験から『こうに違いない』と思い込んでしまう」ためで、自分の経験を「一般的なこと」と信じすぎることが思い込みにつながってしまうとのこと。もうひとつは行動範囲や生活パターンがある程度決まっている場合に多いが、「ひと昔前の過去の経験にとらわれてしまっている」ためで、「自分の当たり前」を疑う機会がほとんどないことが思い込みにつながりやすいとのこと。どちらもベースとなるのは自分の経験なわけで、それを価値観のベースにするのは大事なことだが、それだけに固執してしまうことが視野を狭め「アンコンシャス・バイアス」を生み出してしまうわけだ。

 だからこそ坂東さんは「新しい価値観に触れよう、と自ら意識する必要があります」とメッセージをおくる。そのためには新聞や本、雑誌などを読み、世の中で起きていることを知ることもいいし、自分と違った環境に置かれている人の話を聞いてみるのもいい。「自分から一歩踏み込んで、自分と異なる行動の基にある考え方に触れる」のが大事になってくるのだ。

 坂東さんといえば大ベストセラー『女性の品格』(PHP研究所)など、「女性の生き方」についてメッセージを発信してきたイメージが強いが、本書のテーマである「アンコンシャス・バイアス」は性別も年齢も問わない問題だ。人間関係を円滑にし、もっと生きやすくなれるように、男女問わず大いに参考になる一冊だろう。

文=荒井理恵