日本共産党って怖い? 結局どんな政党? 複雑かつ厳格な、知られざる内部事情
公開日:2023/2/1
自民党の総裁選や立憲民主党の党首選など、各政党のリーダー選びは社会的にインパクトのある大きなニュースとして注目を集めるものだ。そのイメージが強いためか、てっきりどの党も同じようにリーダーを選んでいると思っている人も多いかもしれない。だが、実は日本の主要政党では共産党と公明党は党首公選を実施していない。『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(松竹伸幸/文藝春秋)は、そうした状況に共産党の一党員が共産党の「党首公選制」を求めて、執行部批判を辞さずに切り込んでいく一冊。党としての「統一見解」を重んじ、一枚岩の印象が強い共産党においては、批判も含んだ自由な意見が出るのは極めて異例のこと。なんと本書の刊行と同時に行った記者会見に12社のメディアが駆けつけるなど注目を集めているという。
1974年に共産党に入党したという著者の松竹伸幸氏は、一時は党本部の政策委員会で安保外交部長を務めたこともある人物だ。ある問題で志位和夫委員長との間に考え方の相違が生まれて退職し、京都のかもがわ出版で編集者に。とはいえ一貫して共産党員であり、現在も党費やカンパを供出し、所属する支部(職場・地域・学校などで組織される共産党の基礎組織)の会議は欠席したことはないという。が、しかし、タイトルにあるようにあくまでも「ヒラ党員」である。そんなヒラ党員である松竹さんが、党員による投票が可能な党首公選制を求め、かつ自分が立候補する理由を述べるというのが本書だ。
松竹氏によれば、世の中に「共産党は怖い」というイメージを持っている人は少なくなく、そのイメージを変えるためには「党首公選制が必要」なのだという。実は松竹氏のように、共産党の中にもメインストリームと異なる意見は存在しているし、それについてかなり大真面目に意見がかわされているものの、変化は見えてきていないとのこと。折しも「野党共闘」が望まれる中、多様な意見や議論がちゃんと存在している共産党の姿を「見える化」することは、「共産党は怖くない」とわかってもらうための大事な一歩だと松竹氏。そのためには党首公選で議論をオープンにすることが肝要であり、社会に広く理解・共感してもらえるきっかけになるというのだ。
こうした著者の主張とあわせて、次第に明らかになる共産党のシステムも興味深い。「民主集中制」という名の上意下達システムをきっちり維持していることだけでなく、それを維持するための規定の厳格さにも驚く。たとえば「党内に派閥・分派は作らない」という原則があり、「他の部局」と横の連携を取ることも分派につながるために禁じられているという。その結果、同じビルの中の部署の備品の情報共有(たとえば冷蔵庫の設置など)でも揉めたり……なんとも、その生真面目さに驚きだ。
なお、本書で著者があわせて強調するのは「安保・防衛政策」について。この問題について、共産党がどのような態度を取るのか問い直すことに主眼はあるものの、著者が示す社会実相に即して踏み込んだ意見は興味深い。ウクライナ戦争や台中問題など、世界的な危機が目の前にある今、この問題は私たち一人一人がしっかり考えなければならないのは間違いない。どのような未来をつくるのか、あらためて考えていくためのヒントにもなる一冊だ。
文=荒井理恵