『しゃばけ』の作者が作り上げた続編期待の新作! 猫又お江戸ファンタジー『猫君』を読書好きはどう読んだ?
更新日:2023/7/7
年老いたうちの猫の尻尾が二叉に分かれて“猫又”になり、ずっと一緒にいてくれないだろうか――。そんな非現実的だけど、切実な願いを抱いたことがある猫好きは少なくないだろう。
『猫君』(畠中恵/集英社文庫)は、まさにそんな夢の先を描いた長編小説だ。本作は摩訶不思議な妖たちが様々な事件を解決する「しゃばけ」シリーズ(新潮社)の作者による、斬新な猫ファンタジーである。
縁起のいいとされる“金目銀目”を持つ、茶虎猫のみかんは、飼い主のお香にかわいがられて暮らしていた。あと少しで生後20年という頃、尻尾が二叉になりかけ、人の言葉を話し始めるように――。そして、病床に伏していたお香は「20年生きると、猫又になる特別な存在」であることを告げ、この世を去ってしまった。
お香を取り殺したと疑われ、追われるみかん。助けてくれたのは、先輩猫又の加久楽(かぐら)だった。その後、みかんは同じく新米猫又の白花(しろか)と出会い、江戸には猫又の陣地が6つあることや、「猫君」と呼ばれる英雄的存在がいたことを知る。
猫又たちの間で猫君の再来が噂される中、みかんは猫又の学び舎「猫宿」へ行くことに。そこで仲間の猫又たちと様々な試練に挑戦し、一人前の猫又を目指す――。
そんなハラハラドキドキする、新感覚の猫又お江戸物語を世の読者はどう捉え、読後にどんな想いを抱いたのだろうか。
サクラ
江戸の時代に猫又になりたての新米猫又達の冒険譚。猫又の為の学校、徳川将軍家との関わりなど設定からして面白い! 何よりみかんちゃんがとにかく可愛い! 是非続編を読んでみたいです。
原ふぉみか
蜜柑色の毛並みを持つ猫又「みかん」が江戸の町を駆け回る…! 私の好きが果汁100%濃縮還元されていて、あらすじだけで既に楽しい。一悶着あるものの血なまぐさい展開は一切なく、猫たちが愉快に可愛く冒険する姿がとにかく愛おしい。終始ニマニマしながら読んだ。続編希望!
なもないのばな
猫は年をとったら自然に立派な猫又になるのではなく、猫宿で学ばなければならないという発想が面白い。そのため新米猫又たちが子猫のように描かれるので、見守るように読んでしまう。
実はカッパ
化け猫になったばかりのみかん達の鍛錬と成長物語。とにかく可愛すぎて止まらない。言葉の間に挟まれる「みゃん」とか、猫ならではのちんまり座ったり袖に潜り込む描写とか、想像するだけで見悶える可愛さ。もちろん猫の可愛さだけでなく、まるで小学生の子供が頑張っているかのような初々しい冒険譚やミッション達成のために仲間との協力するところは面白くも微笑ましい。
とも
とにかくかわいかった!文句無しにかわいかった!そして、なぜか最後は泣けてしまった。猫又いいなあ。うちの子達も20年生きてくれないかな。うーんとうーんと長生きしてほしい。
よっしー
前々から気になってて…やっと読めました。新米の猫又達が失敗しながらも頑張るお話。猫又の世界だけでなく、江戸の将軍を巻き込んだり、歴史上の人物の正体が吃驚だったり…。設定は勿論、テンポ良く物語が進むのであっという間の読了でした。新米達が立派な猫又になるまでの物語が出るのかな?出たら読んでみたいものです!!
本作はお江戸ファンタジーであると同時に、それまで知らなかった“猫又界”に猫たちが足を踏み入れ、成長していく猫アドベンチャー小説でもあると感じた。個性豊かな新米猫たちが人の姿に化けるための化け学を学んだり、猫又としての能力だけでなく、心も強く鍛えていったりする姿が胸を打つ。
特に、物語の後半に起きる6つの陣地をめぐった、新米猫又と先輩猫又の陣取り合戦は見ごたえ満点。先の展開が読めず、結末はどうなるのか…と引き込まれてしまう。
また、生類あわれみの令など、実在した史実と架空の猫又史が上手く融合されているため、本当にこんな世界があったのではないかと思え、心が躍る。もしかしたら、今の時代にも人に化け、人間と同じように暮らしている猫又がいるのではないかと想像し、顔がほころんだ。
あなたもこんな風に長生きして、立派な猫又になって、色んな世界をその目で見てほしい――。猫の形をしながら眠る愛猫に、そう声をかけたくもなる本作はハラハラ、ドキドキ、ほっこり、感動…など色々な感情を引き出す、続編が待ち遠しい一作だ。
文=古川諭香