ポーランドからウクライナ支援の最前線に立ち続ける日本人の記録『ウクライナとともに』
更新日:2023/2/24
2022年2月24日、ロシアはウクライナへ全面的な軍事侵攻を開始。戦争は長期化し、これまでに数多くのウクライナ市民が死傷し、学校や病院、住宅などの民間施設やインフラが破壊され続けている。『ウクライナとともに 涙と笑顔、怒りと感謝の365』(坂本龍太朗/双葉社)は侵攻直後から現在に至るまで隣国ポーランドでウクライナ支援を続けている日本人、坂本龍太朗氏による支援の記録、そして日本に向けたメッセージとなっている。
歴史的にも地理的にもウクライナと関係が深いポーランドは侵攻初日から国境を越えて押し寄せる避難民を受け入れ、積極的な支援を行ってきた。ウクライナ国境から車で約2時間半の距離に住むという著者もまた侵攻初日から自宅の一室を避難民受け入れのために開放し、行政と協力して市民体育館を避難所にするべく自費で物資を買い集めるなどの準備を進めている。なぜ支援をしようと思ったか、そのきっかけについてこう述べている。
「なぜかと聞かれれば戦争が始まったからとしか答えようがない。逆に、倫理的にこの状況で支援しないという選択はできない。」
誰もノウハウや正解のわからない戦争難民支援。著者はウクライナの人々の苦境に触れ、何度なく涙を流しながら奔走する。避難所の整備と物資の補給、避難民受け入れの調整、支援金集め、行政と支援の橋渡し、滞在住居の手配、子どもたちへの教育支援、ウクライナへの医療物資や食料、発電機などの必需品の搬入、心に大きな傷を負った人々のケア――戦況や季節によっても必要とされる支援の内容は異なり、その活動は実に多岐にわたる。
自宅にこれまでにふたつの家族を合計で1ヶ月以上も受け入れてきた著者は、まさに避難民支援の最前線に立っていて、その視点から見えてくるウクライナの人々の過酷な現状もまた綴られていく。誕生日プレゼントに「ウクライナの平和がほしい」という少女、危険を承知で故郷に戻りたいと願う女性、家族が引き裂かれ、家を焼かれ、家族や友人が犠牲になり、隣国とは言え異国での避難生活を余儀なくされている人々が抱える複雑な思いは、これまで日本にあまり伝わっていなかったものだろう。何の罪のない子どもたちが背負わざるを得なくなってしまった悲しみにはとくに心が痛む。
本書を読んでいると、すべてをなげうってウクライナ支援に身も心も捧げているように見える著者自身のこともまた心配になってくるが、“命”の“使”い方を使命と呼ぶ著者の自らの使命をウクライナ支援とし、今後もしばらくは自らの命をウクライナのために使いたいという。ロシアの侵略が続く限り、ウクライナの人々は苦しむことになり、支援活動も終わることがない。
この戦争はさらなる長期化が予想されているが、著者はこれからもウクライナ支援の最前線に立ち続けるのだろう。戦争が始まって1年が経ち、日本でのウクライナ情勢に対するメディアの関心が少しずつ薄れてしまっている中において、人々が関心を寄せ続けることも支援のひとつだと著者はいう。本書を読んでウクライナ支援活動の現場では何が起きているのかを知り、自分たちにできること、するべきことは何なのか、それを考えることはきっと大きな意味を持つはずだ。