秋元真夏 「思考回路がすべて乃木坂46につながっている」センターポジションに憧れた頃から後輩を見守るキャプテンに変わった11年間を語る【卒業写真集インタビュー】
更新日:2023/2/22
2023年1月7日。乃木坂46のキャプテン・秋元真夏さんがグループ卒業を発表した。2011年に乃木坂46の1期生として加入し、2019年には2代目キャプテンに就任。約11年間、グループの中心メンバーとして活躍した彼女の卒業は、乃木坂46の歴史のなかでも大きなターニングポイントになるはずだ。
卒業を間近に控える2月21日、秋元真夏さんの卒業記念写真集『振り返れば、乃木坂』(幻冬舎)が発売される。ソロカットだけでなく後輩メンバーとの対談がたっぷりと収録され、メンバーから愛されてきた最年長キャプテンならではの、あたたかい作品となった。
本記事では、秋元真夏さんにグループでの11年間を振り返りつつ、後輩への想いや卒業を決心した理由について語っていただいた。卒業を間近に控えたいまだからこその言葉の数々をお届けする。
(取材・文=金沢俊吾 撮影=干川修)
いま見えてる景色も、卒業してしまったら同じような気持ちでは見られない
――卒業を発表されて2カ月ほど経ちました。現在の心境を教えてください。
秋元:ありがたいことにスケジュールはたくさん詰まってるんですけど、気持ちは落ち着いていて、卒業ライブに向けてゆっくり準備をしてるような感覚ですね。
――発表当初はもっと気持ちが揺れ動いていたのでしょうか?
秋元:そうですね。メンバーの顔を見ながら卒業を伝えたときは本当に心苦しかったです。毎日一緒にいた人たちに「私はこの場を離れます」と伝えた瞬間に「卒業」というものが動き出しちゃう気がして。「卒業は新しいスタートでもあるんだ」と自分に言い聞かせていたんですけど、それでもやっぱりさみしいですよね。
――そんななかスタートした『振り返れば、乃木坂』の撮影は、どんな想いで臨まれたのでしょうか?
秋元:メンバーに卒業を伝えた直後に撮影が始まったんですよ。「いま見えてる景色も、卒業してしまったら同じような気持ちでは見られないんだろうな」と考え始めたら涙が止まらなくなりました。最後に載っている海辺のシーンは、そうした瞬間を収めていただいたものです。とにかく、常に「卒業」の2文字が頭にありながら撮影をしていました。
――海辺のシーンは大人っぽい表情がとても素敵でした。今回、3冊目のソロ写真集となりましたが、過去の2冊とは秋元さんの纏う雰囲気も大きく変わったと思います。
秋元:いまと全然違いますよね(笑)。特に『真夏の気圧配置』の頃は、前髪をなんとしても死守したかったんです。どんな撮影だろうと、風が吹いてもまったく崩れないぐらいガチガチに自分でセットしていました。
――そう言われて拝見すると『真夏の気圧配置』ではどのシチュエーションも同じ前髪ですね。
秋元:そうなんですよ。でも今回はメイクさんや衣装さんとお話しして、できるだけお任せするようにしたんです。だんだんと、見た目の部分でも固定観念にとらわれなくなってきたっていうのは大きい変化なのかなという気がします。
――なぜそのような変化が生まれたのでしょうか?
秋元:たくさんのファンの皆様が、ガチガチに作られた私よりも素の私を好きだと言ってくれたからだと思います。そうした声を聞いて「あ、そのまま写ってもいいのかもしれない」という自信が持てるようになったんです。
楽屋に置いておきたいような写真集
――『振り返れば、乃木坂』は、大人っぽいランジェリーカットもあれば、料理している姿がレシピ付きで収められてもいます。後輩メンバーとの対談もたっぷり収録されていて、バラエティに富んだ1冊になりました。
秋元:もう最後だから、私が見せたいものを全部詰め込みたいと思ったんです。料理してるシーンもあって、後輩と一緒のくだけた表情もあって、セーラー服も着ちゃう、みたいな(笑)。
――セーラー服、とても似合っていました。
秋元:ありがとうございます、うれしい。全部詰め込んだ結果、秋元真夏の名刺みたいな作品になったなと、いま話していて思いました。そんなつもりで作っていたわけではなかったんですけどね。
――個人名義の写真集ではありますが、2~5期の各期メンバーも多数登場して、「乃木坂46の作品」といった印象も受けました。
秋元:「乃木坂46のキャプテンが卒業」というタイミングでのこの作品に、注目してくださる方もきっと多いと思うんです。そのとき、私だけじゃなくて、素敵な後輩にも目が向いたらうれしいなっていう思いがありました。私が卒業したあともグループがどんどん良い方向に行ってほしいんです。
――きっと、メンバーにとっても大切な作品になったのではないでしょうか?
秋元:後輩たちには、さみしさとか不安を抱えたときに、この写真集を開いてもらえたらうれしいです。普段の私そのままの表情が写っているので「あ、真夏さんここで笑ってるじゃん」って。
――写真集を開けば真夏さんに会える、というような。
秋元:もちろん直接会いに行きたいんですけどね(笑)。会えないときはこれを見てもらって、ちょっと元気を出してもらいたいなと思います。みんなの楽屋に置いておきたいような写真集になりました。
思考回路がすべて乃木坂46につながっている
――写真集に収録されている3期生との対談で、副キャプテンの梅澤美波さんに「卒コンは自分主体で考えないとだめですよ」と言われていました。普段から自分のことよりもグループ全体のことを考えてずっと活動されているような印象があります。
秋元:キャプテンになってからは特にそうだったと思います。シングルの選抜発表やライブで「あの子はいま、何を考えてるんだろう」「絶対落ち込んでるよな」とか、自分よりもみんなの感情をメインに考えていました。
――乃木坂46には現在40名も在籍しています。全員のことに目を配るのは、とても大変だったのではないでしょうか?
秋元:それが、もう癖になっていてあんまり苦にならないんですよ。元から人間観察が好きで、相手の脳内を勝手に想像するのをよくやっていました。その癖がキャプテンになったことで活かせたような感じなんです。
――もともと好きだったことがキャプテンになって役に立ったんですね。
秋元:もう私にとって、乃木坂46のことを考えるのは趣味なんです。家でテレビ番組を見ていて、メンバーに似た髪型の人が出てるだけで「そういえば、あの子何しているかな?」って考え始めちゃったり(笑)。私の思考回路は、最終地点がすべて乃木坂46につながっているみたいです。
かつてはセンターに選ばれたい気持ちもあった
――写真集に収録されたロングインタビューのなかで「2016年ぐらいまでは自分が前に出たい気持ちがあった」とおっしゃっていました。そうした気持ちがどのように薄れていったのでしょうか?
秋元:いまでも、出るときは出たいっていう気持ちは根本にあります。でも、グループでは2列目のポジションで初めてセンターに立つ子たちを支えることが多かったんです。そうした補佐的なポジションのほうが自分に合ってると気付いたんですよね。
――センターに選ばれたい気持ちはなかったんですか?
秋元:以前はすごくありました。選抜発表のたびに「もしかしてセンターは私かな?」とドキドキしたり(笑)。キャプテンになってからはそんな気持ちもなくなって「あの子がセンターになったら、また新しい乃木坂46が見られるんじゃないかな」なんて考えるようになりました。
――キャプテンになったことで活動に対するスタンスも変化していったのだと思いますが、卒業のタイミングにも影響はあったと思いますか?
秋元:そうですね。キャプテンをやってたから11年もいたのかな、という気はしてます。「そろそろ次の世代にバトンを渡すタイミングかも」なんて、私の性格的にすぐ考えてしまいそうなんですよね。そうならずに長くいさせてもらったのは、キャプテンというポジションのおかげかもしれません。
――長くいられてよかったな、という感覚でしょうか。
秋元:そうですね。本当は長くいたかったので(笑)、ありがたかったなと思います。
――近年は白石麻衣さん、生田絵梨花さん、齋藤飛鳥さんとグループを牽引した1期生メンバーが立て続けに卒業されました。キャプテンとして、1期生を全員見送ってから卒業という考えもありましたか?
秋元:誰かを見送ろうとか、そういう考えはまったくありませんでした。あくまで自分のタイミングで決めさせていただこうと思っていましたね。
――改めて、卒業を決めたきっかけを教えてください。
秋元:シンプルに、後輩メンバーだけでもやっていけると思ったからです。それをメンバーに話すと「私たちだけじゃ全然できないです!」って言うんですけどね。でも、私から見たらもう大丈夫だと思ったので、卒業を決めました。
後輩の成長を感じた日産スタジアム
――「後輩メンバーだけでも大丈夫」と思えた、具体的なタイミングがあったのでしょうか?
秋元:去年の5月に日産スタジアムで開催した「乃木坂46 10th YEAR BIRTHDAY LIVE」です。不安だらけで迎えたこのライブを成功させられたことが、私にとってはとても大きい出来事でした。
――どんな面で不安だったのですか?
秋元:1期生が4人しかいない状態で、乃木坂46にとって最大規模となるライブをやることも不安でしたし、大きいライブに初めて立つ5期生のことも心配でした。いろんな不安が重なるなか、ちゃんと成功させられたのは大きな自信につながったんです。
――日産スタジアム2DAYSは、乃木坂46の歴史に残るようなライブになったと思います。
秋元:そうなったのは、1期生4人が引っ張ったからではないと思っているんです。後輩ひとりひとりが「ここに立つことはとんでもないことだ」という自覚を持って臨んだからできたライブだと思うんですね。私がいなくても大丈夫なのかもな、と考え始めたのは、あのライブがきっかけでした。
――このライブは、白石さんや西野七瀬さんなどの卒業メンバーが多数出演したことが大きな話題になりました。そのなかでも秋元さんは後輩メンバーの成長を感じられていたのですね。
秋元:やっぱり印象としても、ファンの皆様の喜びとしても、圧倒的に卒業生の登場は強かったと思うんです。始まる前は、卒業生の存在感にすべて持っていかれる可能性もあると思っていました。でも、卒業生が来てくれた盛り上がりに負けないぐらい、現メンバーのパフォーマンスがファンの皆様の喜びにしっかりつながったと思えたんです。
――いまのメンバーだってすごいんだぞ、ということが証明できたような。
秋元:そうですね。それって、後輩たちが卒業生に追いついてきた証拠なのかなと思えたんです。卒業生のおかげで、後輩たちは私が思うよりよっぽど成長していることに気付けたんですよね。
もう悔いはない
――最後に、卒業後の活動について、現時点で考えていることを聞かせてください。
秋元:バラエティ番組に出たり、ロケに行ったり、いろんなことができたらいいなと思っています。これまでは乃木坂46のメンバーとして覚えていただけていたかもしれませんが、これからは私個人として、秋元真夏の名前をもっと広めていけるように頑張っていきたいです。
――2月26日には卒業ライブも控えています。乃木坂46のメンバーとして、やり残したことはありませんか?
秋元:やり残したことはありません。卒業ライブは声出しが解禁になったんですよ。最後までライブでの声出しは叶わないと諦めていて、夢としても口に出さないようにしていたぐらいでした。こんなにうれしいことはありません。もう悔いはない。あとはライブでちゃんと思いの丈を話せれば、気持ちよく卒業できると思います。
――梅澤さんの言う通り、ライブではがっつり主役になれそうですか?
秋元:主役になるつもりなんですけど、そこが一番不安です。この11年間で一番不安です(笑)。
――でも、みんなが秋元さんのことを観に来られるはずですよ。
秋元:そうですよね。はい。頑張ります、全力で。