小林多喜二『蟹工船』あらすじ紹介。劣悪な労働環境を改善するため労働者たちが立ち上がる!
更新日:2023/4/4
『蟹工船』はプロレタリア文学の代名詞的作品で、短い小説ながら現代と通ずる部分が多いのが面白く、「ブラック企業」が取り沙汰される現代において、再び脚光を浴びています。この記事では、結末までのストーリーと内容をわかりやすく紹介します。
『蟹工船』の作品解説
蟹工船とは、船内に蟹の加工設備を持つ工場船です。搭載された小型船で漁を行い、母船に持ち帰り缶詰に加工。この蟹工船での労働環境は劣悪を極め、さしずめ暴力支配による「ブラック企業」でした。本作は現代の社会問題にも通じる作品で、労働者が人権意識に覚醒し、現状を打破しようとするクライマックスには胸が熱くなること必至です。
本作の出版当時、日本は軍国主義へと邁進しており、主義に沿わないものは発禁処分にされていました。『蟹工船』もその対象になり、著者である小林多喜二は特高警察に逮捕され、拷問の末に惨殺されるという壮絶な最期を遂げています。
『蟹工船』の主な登場人物
労働者たち:船に乗るしか働き口がない東北一円の貧困者たち
浅川:人の命より漁獲量を優先する非情な労働監督
『蟹工船』のあらすじ
蟹工船では、劣悪な環境で長時間労働という、非人道的な労働者の酷使が平然と蔓延っていた。蟹工船は「工場船」であり、「航船」ではないため、航海法は適用されない。純然たる「工場」であるにもかかわらず、工場法も適用されない。そして、海上に出てしまえば、そこは法の空白域なのである。
労働監督の浅川は理由を問わず、働けぬ者に容赦なくこん棒を振り下ろした。過労・傷病・事故……次々と倒れ、また死んでいく労働者たち。浅川の暴力と虐待による支配は日に日に苛烈さを増していく。
ある時、大荒れの日にゴリ押しで漁に出され、数日間、行方不明になっていた小型船が帰着する。乗組員たちは偶然ロシア人に救出されており、中国人の通訳から「プロレタリアートこそ至高の存在」と教え込まれていた。ここで教えられた人権という概念は徐々に労働者たちに伝播していく。
人権意識に目覚めた労働者たちによって、ついにストライキが決行される。浅川を追い詰め、成功するかに見えたが、護衛として随伴していた駆逐艦のクルーによって鎮圧。ストライキは失敗に終わってしまう。
浅川は復讐心に燃え、労働はさらに過酷さを増す。だが、一度目覚めた人権精神が死ぬことはない。そして、労働者たちは「もう一度!」ストライキに立ち上がるのだった。
<第50回に続く>