猫パンチ→飼い主の足を踏みつけ飯を催促!? キラキラしていない爆笑猫ライフを描くコミックエッセイ
更新日:2023/3/1
泣いて笑えて、ほっこりする猫コミックエッセイは数多くあるが、筆者には発売から何年経ってもやっぱり好きだなと思う作品がある。それが、「鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!」シリーズ(鴻池剛/KADOKAWA)だ。
本作は、これほどまでに「猫コミックエッセイ」というジャンルが人気になる以前から、大きな注目を集めた猫漫画。自由気ままな愛猫のぽんたとアルフレッドに振り回される作者のコミカルな日常は、抱腹絶倒だ。
不器用で変わった行動を見せる愛猫ぽんた
本作の魅力はなんといっても、作者が描くぽんたが個性的で愛くるしいところにある。ぽんたは、遊び方が独特。ねこじゃらしはじゃれず、強奪して咥え、持ち手を引きずる。
ちょっぴり不器用なところもあり、怪我をしたせいでエリザベスカラーを装着した時は、カラーがつっかえて壁の隅で身動きが取れなくなってしまったことも。
猫としての狩猟本能はどこへいったのか、家に虫が出ると、後ずさりをして戦闘を回避する。
そうした猫らしからぬ、ちょっと抜けた姿を見せる反面、なぜか作者に対しては強気。ダイエットのためにフードを減量し、ちょうだいアピールにも応えなかった日には排便後のおしりを寝ている作者の顔の前に向け、プチ嫌がらせ。
出会った当初はかわいい声で鳴いてご飯を催促していたが、一緒に暮らして2年ほど経つと、作者の足を猫パンチしてから踏むという、独特のおねだり法を習得した。
自由奔放なぽんたとの暮らしは、作者にとって予想外の連続。例えば、ネットの情報をもとに、作者が目を閉じた時の反応でぽんたからの信頼度を確かめた際には、目の前から去るという悲しい結果に。
大声を出し、噛み癖を治そうとしつけをした時には、声を発するたびにキラキラした目で飼い主の姿を確認するぽんたの様子に恐怖を覚えた。
こうした予測不能な行動を見せるぽんたや、それに振り回される作者の姿に、世の猫飼いは自身の猫ライフを重ね合わせて、クスっとしてしまうはず。うちの子に翻弄させられる日々の尊さを本作は、あらためて気づかせてくれるのだ。
また、シリーズ2作目からは同居猫のアルフレッドが家族の仲間入りを果たし、暮らしはますます賑やかになる。
アルフレッドは、作者が帰宅時に保護した子猫。
猫風邪を患っていたため、完治してから里親を探そうと考えていたが、本当に大切にしてくれる飼い主を探せるのか不安になり、結局、自宅へ迎え入れることに。
こうして家族の一員となったアルフレッドも、ぽんたに負けず劣らず、自由奔放な性格だったよう。執拗なまでに作者の髪にじゃれたり、給水機の中に猫草やドライフードを落としたりと、謎行動をたくさん見せる猫だった。
突然やってきたアルフレッドに対し、ぽんたは最初、威嚇や猫パンチ。だが、2匹は次第にほどよい距離感を見つけ、結託して作者を困惑させるようにもなる。
2~3巻では、そうした日常が描かれているのだが、中でも特にクスっとさせられたのが、作者が食当たりになった時の悲劇。こんな時に…と言いたくなるような絶妙なタイミングで作者に寄り添う2匹の姿がユニークだった。
本作はいい意味でキラキラしていないので、描かれている等身大の猫ライフに、「我が家でもあるある」と共感しやすいように思う。ここでしか読めない描き下ろし作も収録されているので、手に取り、無邪気な猫たちと作者の狂騒劇を楽しんでほしい。
文=古川諭香