クロちゃんの愛読書はまさかの絵本!? 落ち込んだときに元気をくれた"わがままだけど憎めない王さま"の話【私の愛読書】
公開日:2023/3/11
お笑いトリオ「安田大サーカス」のメンバーとして活躍するだけでなく、近年はアイドルグループ「豆柴の大群」「都内某所」のプロデュースや楽曲制作にも携わるクロちゃん。学生時代からポエムを綴るのが好きだったとあって、作詞においては独特のワードセンスを発揮している。著書『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)も話題のクロちゃんが、幼い頃から愛読してきた一冊とは……?
(取材・文=野本由起 撮影=島本絵梨佳)
わがままで子どもっぽい王さまは、今でいうYouTuber?
──クロちゃんに愛読書を一冊選んでいただきました。どんな本でしょうか。
クロちゃん:僕、絵本が好きなんです。中でも、大好きなのが「ぼくは王さま」シリーズ。出会ったのは小さい頃ですけど、短大時代も図書館や児童館でこのシリーズを読んでいたんですよね。
主人公の王さまは、わがままで子どもっぽいんです。家来や街の人に対して「牢屋に入れるぞ」って脅したり、卵が好きだから「卵焼きを作れ」って言ったり、「勉強したくない」ってすねたりするんですよね。そんな王さまがいろんなところに出かけて、騒ぎを起こしたり怒られたりする。偉そうだし、普通なら悪人として扱われそうですけど、この王さまはなぜか憎めないんです。身近にいたら嫌なのに、本を読んでる限りはバカバカしくて面白い。威張っている王さまがひどい目にあってしゅんとすれば、「あー、スッキリした!」とも思いますしね。
──王さまのキャラクターがお好きなんですね。
クロちゃん:そうですね。僕も卵が好きなので、そういう共通点があったのも大きかったかもしれない。ただ、マネージャーにこの本の話をしたら、「クロちゃんに似てますね」って言われたんです。僕は王さまのことを「ダメな王さまだな」と思ってたから、「クロちゃんそっくりじゃないですか」って言われて腹が立ちましたね!
──確かにお話を伺っていると、自己紹介をされているのかと……。
クロちゃん:自己紹介じゃないっ! こんな王さまですけど、最終的に優しくなる話もあるんですよ? 『ドラえもん』でも、映画だとジャイアンが優しくなったりするじゃないですか。ちょっと似ている感じもありますね。それもあって憎めないんです。わがままなだけじゃないから。
そもそも王さまって、大人なのに言ってることが子どもなんです。「ダメな大人だな」と思いつつも、かわいげがあるから好きになっちゃう。ぜひみなさんもこの本を読んで、僕の好きなわがままな王さまの日常を覗いてほしいですね。
──基本的には、わがままな王さまがどこかに行ったり、事件にあったりする話なんですよね。
クロちゃん:そうです。ネズミが嫌いだから駆除しに行ったけど逆にやられちゃって……とかね。特に好きだったのは、大きい卵焼きを作るために象の卵を探しにいくシリーズ1作目。ほんとにバカバカしいじゃないですか。やってることは、今でいうYouTuberですよね。しょうもないことを思いついて実行しちゃうわけですから。
あ、今思ったんですけど、『水曜日のダウンタウン』もそんな感じかもしれないですね。だって僕、酔っ払って寝ている間に無人島に連れていかれましたからね! 「あ、酔っ払ってたけど、ちゃんと家に帰って寝たのか」と思ってドアを開けたら、いきなり無人島。オーシャンビューですよ。そこから急にドラゴンボールを集めることになるなんて、エグいくらいファンタジーじゃないですか。
初めて書いたポエムは、まさかの「鬼」目線!
──絵本がお好きとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか。
クロちゃん:絵本って、子どもだけじゃなく大人にも刺さりますよね。もともと小さい頃から絵本が好きだったんですけど、もう一度読み始めたのが中学2年生の時。急性虫垂炎になって「すぐ手術しないといけない。このままだと死ぬ可能性がある」って言われて。生まれて初めて死を意識した時に、ポエムを書き始めたんです。それによって、また絵本を読みたくなったんですよね。
──どんなポエムを書いていたんですか?
クロちゃん:最初に書いたのが『鬼』っていうポエムでした。「鬼って優しいんだよ 鬼って本当に優しい生き物なんだよ 人に蔑まれ嫌なことされてもグッと我慢する 本当は優しい生き物なんだよ 僕はそんな鬼になりたいと そっとうつむく」って。まさかの鬼目線!
その時は気が付かなかったんですけど、今になって思うと自分のことを重ねてたのかなって思います。僕は周りの人にいろいろ言われたり、声が高いから「歌ってみろ」って歌わされたりしてましたから。自分の記憶の中では、中学校の給食の時にみんなから「歌って」って言われたからみんなを喜ばせるために歌ってたって認識なんですけど、当時の友達に聞くと「お前、ヤンキーに『歌え』って命令されて歌わされてたよ」って言うんです。自分の脳内で、勝手に記憶を変換してるんでしょうね。他にも、足を鍛えたいと思って、裸足で学校に行ったりもしていました。人からひそひそ言われることもあったけど、僕は自分を曲げられなかったし、人に合わせることができなかった。そういう自分は間違ってないと思いながら生活していたから、もしかしたら「鬼」だったのかもしれないです(笑)。
──今は、アイドルグループの作詞もされていますよね。絵本を読んだり、ポエムを書いたりしたことは役立っていますか?
クロちゃん:絵本を読むと、想像力が膨らむんですよね。それは作詞に役に立っている気がします。「豆柴の大群」も「都内某所」も歌詞を書かせてもらっていて、すでに10曲以上書きました。その歌詞に出てくるワードを、ヒャダインさんや川谷絵音さんが褒めてくださって。そういう時に、絵本好きでよかったなと思いますね。絵本から自由な発想をもらったし、大人になっても絵本を読んでるから発想力が豊かになっている気がします。
──今もポエムは書いているんですか?
クロちゃん:ずっと書いてますね。SNSがあってよかったです、自分が思ったことを書かせてもらえるから。SNSで炎上して心のよりどころがなくなった時も、それがポエムを書こうという意欲になるんですよ。外に出て暗がりで写真を撮って、闇ポエムを書くこともあります。ポエムや絵本が好きでよかったなと思うのは、そういう時。「漆黒の闇に飲み込まれそうになっている僕はプリズナー」「雷鳴がとどろく中で、僕に雷が当たらないのは神様に祝福されているからなんだ」みたいなポエムをSNSにアップするのがめちゃくちゃ好きなんです。
面白いことに、そうやってポエムを何年も書いていると自分の中に変化が起きるんです。今までは闇に飲み込まれそうになって逃げてたはずなのに、今は闇に飲み込まれてそこから抜け出そうとする話になっていたりして。ポエムの中で、ストーリーが動いているのが面白いですよね。
──最後に、クロちゃんの愛読書「ぼくは王さま」シリーズについて伺います。この本はどんな人におすすめですか? 「こんな時に読むと楽しめる」という提案があれば教えてください。
クロちゃん:落ち込んだ時、「こんなダメな王さまがいるんだな」って楽しんでもらえたらいいですよね。どんなに偉い王さまでも、わがままでダメな部分がある。自分にもダメなところがあっていいんじゃないかなって思えるんじゃないでしょうか。みなさんも、「王さま」シリーズを読んで嫌なことを忘れてください!
<第10回に続く>