「最大の幸せは結婚し家庭を築くこと」は過去のもの? 「ソロ活」が浸透しつつある現代、既婚者も持つべき心構えとは
公開日:2023/3/4
結婚は幸せの入り口か。それとも不幸への入り口か……。愛し合う者同士が家庭を築き、やがては子どもを授かる。マイホームで家族そろって微笑み合うような、かつて最良とされた結婚観、家族像はもはや過去のものとなった。
国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集」(2021年版)によると、2015年の「50歳時の未婚率」は男性が23.37%、女性が14.06%で上昇傾向に。今後も「非婚化」が加速し、2040年には単身世帯の割合が40%に迫るという指摘もある。
結婚、家族を取り巻く社会背景に何が起きているのか。その現代像を提示する書籍が『結婚滅亡 ~「オワ婚時代」のしあわせのカタチ~』(荒川和久/あさ出版)である。本稿の筆者は既婚男性の目線から本書を手に取ったのだが、自身の「結婚」の決断が果たして正しかったのか否かを、本書を通して改めて考えるようになった。
ソロ活を謳歌? 1人が好きな「ガチソロ」「カゲソロ」が40%に
著者の荒川和久氏は2014年から独身生活者研究の第一人者として様々なメディアに出演している。その研究の一環で、配偶関係に関わらず「1人が好き」とする価値観を持つ人間を「ソロ度の高い」人と定義。本書を出版した2019年までの5年間で10万人以上を調査したところ、ソロ度の高い人は「40〜45%」を数えたとしている。
さらに興味深いのは、研究結果をもとにしたソロ度の分布だ。本書では4方向に分かれたマトリクス図で示しているが、以下のとおりテキストで紹介したい。
〈独身〉
ガチソロ=結婚意識低い。1人の時間大切(20%)
エセソロ=ゆくゆくは結婚する。独身は仮の姿(20%)
〈有配偶〉
カゲソロ=結婚はしたけれど…(20%)
ノンソロ=家庭大事。よき親(40%)
先述したソロ度の高い人にあてはまるのは「ガチソロ」もしくは「カゲソロ」の人だ。「3組に1組が離婚する」といわれる現代では、既婚の「カゲソロ」であっても離婚により「ガチソロ」に戻る人もいるという。
自由を求めてか、本書では「娘が生まれて何もかも変わりました。結婚してしばらくは、悪友たちと夜遊びを続けていましたが、今では家族中心、というか娘中心の生活ですよ。他のものに興味がなくなりましたから」と、独身時代には「ガチソロ」だった既婚男性の証言を紹介している。
ソロ度は「結婚に向いているかどうかを判断するものではない」と著者はフォローする。ただ、結婚後も「1人で遊園地に行ったり、旅行に行ったり」と「ソロ活」を楽しむ「カゲソロ」の人も確実に存在するのを考えると、結婚が必ずしも幸せとは言い切れない側面もある。
家庭だけにとらわれず様々なコミュニティに「接続」する時代へ
筆者の両親は、結婚に対して古くからの価値観を持っていた。幼い頃からそう刷り込まれていたからか、現在の結婚生活にどこかいびつさを感じてしまう瞬間があったのも、本書を手にした理由であった。
実際、古くからの結婚観を押し付けてくる人もいる。独身者に対して「結婚しなさい」と言う人たちも存在し、荒川氏はそうした人たちを「結婚教の宣教師」と呼んでいる。
本来、結婚するかどうかは個人の自由である。ただ、既婚者の中には「(結婚していなくて)かわいそうだ、救ってあげないといけない」と使命感に駆られるがあまり、結婚教に入信しない者は「ルールや秩序を守らない無法者と同じ扱い」とみなす人たちもいるという。
そう考える背景には、家庭こそが幸せのすべてであり“本来持つべきコミュニティのあり方”だとする価値観も垣間見える。しかし、もはや家庭だけがすべての時代ではなくなった。本書が提示する「接続するコミュニティ」は、すでに「個人化する社会」となりつつある現代に即した考え方だ。
家庭だけではなく、地域や職場など特定のコミュニティに「所属」するのではなく、様々なコミュニティに「接続」する。例えば、「趣味のコミュニティなら、趣味を行うときだけ」「自己研鑽や学びなら、そういうときだけ」のように、「自分の内面に安心できるコミュニティを築く生き方もある」と荒川氏は提案している。
書名の冒頭から「結婚滅亡」という衝撃的な言葉が出てくる本書であるが、その内容はけっして結婚自体を否定するものではない。ただ、昔からある結婚や家族の価値観にとらわれる時代ではなくなった今、それぞれの人たちがどう生きるべきなのかということを、強く問いかけてくるのである。
文=カネコシュウヘイ