集中力の低下や肩こりの原因は口の中にあった!? これからの人生も元気に過ごしたいなら、今すぐ始めたい「歯」の習慣
更新日:2023/4/25
30代、40代の働き盛り世代や子育て世代は、病気の予防や早期発見のため、人間ドックやがん検診などを受け始める年代だ。しかし、健康に対する意識が高くても、歯科検診にも定期的に通っているという人はそれほど多くはないだろう。歯は、痛くなったり、欠けてしまったりといった不調をきたしてから治療する――そんな考え方を刷新し、健康な将来を手に入れるためのひとつの道筋を示してくれるのが、『健康長寿の人が毎日やっている歯にいいこと』(自由国民社)だ。
著者は、虫歯だけでなく、歯のかみ合わせや顎の状態など口まわりをトータルに診ることで、歯の不調を再発させない治療を目指す歯科医の秋本昌弘氏。本書では、歯や口腔内の状態が人の健康に与える影響を詳しく解説していく。
健康寿命と歯の意外な関係とは?
動脈硬化や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの健康寿命に関わる病気や、うつ病などの精神疾患まで――本書では、全身の健康にも歯が関係していることを、データや研究結果から示していく。ある調査では、咀嚼能力が高い人ほど健康寿命が長いという結果が出ているそうだ。また、歯の根元にある「歯根膜」が歯触りの感覚をつかさどり、食べ物のおいしさの感覚に関わっているため、将来、入れ歯やインプラントが増えると、食べる楽しさを感じる機会が減るリスクがあるという。
あなたは大丈夫?簡単にできるセルフチェック
また、若いうちから気にする人も多い噛み合わせ。その違和感を放っておくと、他の器官への負担や口内の痛みにもつながる。わずかな噛み合わせのズレが全身に影響を与え、背骨や骨盤のゆがみ、肩こりや腰痛の原因にもなるという。テレワークになったら体調が悪くなったという人は、デスクワークが主体になったせいだと思っていたことが、実は噛み合わせにも原因があるかもしれない、と著者は言う。
また同じく若い人にも多く見られるのが、「歯ぎしり」や「くいしばり」、「かみしめ」といった癖。著者曰く、これらは歯を失う「悪習慣」として歯科医の間では広く認知されているそうだが、実は、上下の歯が触れるくらいの弱い力の接触でも、それが長時間続くと歯の健康に影響するのだとか。この長時間歯を接触させる癖はTCH(Tooth Contacting Habit)と呼ばれる。
本書にはTCHの有無を確認する方法も掲載されているので、気になる人はチェックしてみよう。
【TCH確認テスト】
①姿勢を正しくして、目を閉じる
②次に、唇を閉じる。その際に、上下の歯を合わせないよう、わずかに離してみる
③この状態で、3分間様子をみる
この状態を楽に続けられない人は、TCHの可能性が高いそう。TCHを自覚したら、起きているときは、力を抜いて「歯が離れた状態」をつくることを意識しようと著者は解説する。
「ながら時間」でOK!口腔内の不調はガムを使ったトレーニングで改善できる
さらに、口腔内の健康を維持するためにはどうしたらよいのか? 忙しい人でも取り入れやすいトレーニングが、ガムを使った方法だ。たとえば、口内の不調を招く「偏咀嚼(左右一方で噛む癖)」を改善するトレーニングは、ガムを使って1日1分からスタート可能。使い慣れていない方の歯でガムを噛むことで、低下した側面の筋力を鍛えられる。また、舌が正しくない位置にある「低位舌」も、ガムトレーニングで対処できる。キシリトールガムを上の前歯の根元近くにある膨らみに押し広げ、ガムを舌につけたまま唾液を飲み込むのを繰り返す。仕事中の「ながら時間」でもできるため、時間がない人でも気軽に始められる。
「セカンドオピニオンを大切にする」「神経を抜く治療には慎重になる」などの、歯医者との上手な向き合い方は、患者の豊かな人生を見据えた治療を行ってきた著者ならでは。本書を読むことで、これまでなんとなく歯医者を選んできたという人や、治療に疑問を持ってこなかった人も、苦痛に感じていた通院を有意義なものに変えることができそうだ。自分の歯と主体的に向き合うきっかけをくれる1冊だ。
文=川辺美希