自分の気持ちを主張できなかった嫁がデリカシーのない義母に立ち向かう！

　主人公のさとこはシャイな性格。昔から引っ込み思案で言いたいことが言えないタイプだった。そんな性格に悩んでいたが、結婚や出産をしたことでこれからの人生にワクワクできるように。

　だが、思わぬ試練がさとこに降りかかる。夫から義母との同居を提案されたのだ。気は進まなかったが断ることができずに同居はスタート。義母は新生活グッズを全て自分色に染めたり、食事に文句を言ったりと、やりたい放題。楽しみにしていた新生活はストレスの日々に変わってしまった。

　嫁いびりのような発言をするくせに、将来さとこに介護をしてもらう気満々な発言にもイラ立ったが、さとこは家の中での居心地が悪くなったり、義母に嫌われたりするのが嫌で怒りを胸の中で抑え込んでいた。

　私さえ我慢すればいい……。そう思い続けていたある日、久しぶりに妹と再会。妹はさとことは違って自分の思いをはっきりと言える性格。新居へ来た妹は臆することなく、義母の嫌味に言い返し、反撃した。

　その姿を羨ましく思うも、自分にはとても真似できそうにないと、さとこは思う。だが妹から「自分をもっと大切にしてあげて」と言われたことにより心境が一変。義母と闘うことを決意し、他人よりも自分の幸せに目を向けるようになっていく――。

　さとこのように、人から言われたことをスポンジのように受け入れる優しい人柄だと、自分より周りがストレスを抱えていないかどうかに視点が向いてしまいがちだ。

　だが、自分の心を守ることができるのは自分だけ。もし、変わりたいという気持ちがあるのであれば、その声を封印せず、耳をじっくりと傾け、これから先どう生きていきたいのかと考える勇気をまずは振り絞ってみてほしい。

　なお本作には、さとこ以外を主人公にしたエピソードも収録されている。さとこの夫視点の話と、「家事は女性が行うもの」という価値観を持った義母に挑むアイコという主婦の奮闘劇、そして孫の面倒を任され生活が激変してストレスを抱えてしまった義母視点の話と、3つのアナザーストーリーも必見だ。

　このように様々な視点が盛り込まれているため、一つ屋根の下で暮らす全員が心地いい家族の形を考えるきっかけも得ることができるだろう。

　また、義父母との関係に悩んでいる人はもちろん、同僚や友人に言いたいことを言えず、なんとなく損をしていると感じている人が本音の出し方を学べるのも本作の良さだ。自分をぞんざいに扱う人との闘い方を知り、誰かに合わせ続ける人生を変えていってほしい。

文＝古川諭香