旅番組での装いがおしゃれすぎると注目され、誕生した前作『草笛光子のクローゼット』（主婦と生活社）。同書では彼女と共に歩んできた私服や思い出のリメイク品、アクセサリーを使ったファッションスタイルを披露し、84歳とは思えない輝きを見せつけていた。

　それから5年の歳月が経ち、90歳を目前に発売へ踏み切った『草笛光子 90歳のクローゼット』だが、当初草笛に出版する気持ちはなかったそう。それでも「挑戦を失ってはいけない」「私でお役に立てるなら」という思いから、再びクローゼットから洋服を引っ張り出したのだという。

　そうした背景から生まれた同書は前作以上に濃い内容となっており、年齢をものともしないあっぱれな着こなし術はもちろんのこと、タンスの肥やしになりそうなジャケットやスカーフ、アクセサリーの今風の活用テクニックやモーニングルーティーンなども紹介されている。中でも彼女のモーニングルーティーンからは、草笛流「日々の整え方」が学べるだろう。

　さらに女優・原節子を真似したマントや越路吹雪のコートなど、往年のスターとの思い出の品も数多く登場するほか、前作では見られなかったボーイフレンド犬・サヴィとのお散歩デートや歴史が詰まったドレス姿も収録されているそうだ。

　またオレンジ色のドレスは、25年前の「NHK放送文化賞」受賞記念パーティー用にオーダーメイドしたもの。真っ赤な帽子を組み合わせた着こなしっぷりもさることながら、あえて片目だけ帽子で隠したショットからは草笛のお茶目な部分が感じられる。いわく「ただ洋服を着て大人しくスッと座るだけというのが苦手」とのことで、これ以外にも彼女のさまざまな表情が楽しめるのも魅力のひとつだ。

　ちなみにボーイフレンド犬・サヴィとは行きつけの花屋さんで出会い、お互いに一目惚れ。今では夕方のお散歩デートを楽しむ仲になったのだとか。お揃いの白いカットソーを着こなす2人は、どこからみてもお似合いの紳士と淑女。上品な2人の気ままなデートを覗き見している気分になれるに違いない。

　思わず自分自身の生き方や、生活を見直したくなるほど好奇心旺盛な人生が垣間見える『草笛光子 90 歳のクローゼット』。最終章には読み応えたっぷりのエッセイも収録されているので、最後の最後まで見逃せない。大女優のファッションフォトエッセイとしてでなく、人生100年時代を自己流に乗りこなす秘蔵書としても目を通す価値がありそうだ。