乃木坂46 鈴木絢音 チャールズ・ブコウスキー、中島らもなど自分自身と真逆の作家が好きな理由【私の愛読書】

文芸・カルチャー

公開日:2023/3/16

鈴木絢音さん

 乃木坂46の鈴木絢音さんは、辞書を読むのが好きだという。辞書好きが高じて、辞書作りに携わる人々との対談を収録した著作『言葉の海をさまよう』が3月7日に発売された。多忙ななか、今でも毎週のように本屋に行くという鈴木さんは、辞書以外にどんな本を読んでいるのだろうか。

 さまざまな分野で活躍する著名人にお気に入りの本を紹介してもらう連載企画「私の愛読書」。今回は、乃木坂46の鈴木絢音さんにご登場いただいた。彼女の意外な一面を知ることができるセレクトをインタビューと共にお届けする。

(取材・文=金沢俊吾)

『死をポケットに入れて』

鈴木:どうしよう。愛読書、いっぱいあるんですけれど、1冊だけですか?

――いえ、何冊でも大丈夫です。

鈴木:どうしようかな……ちょうど今読んでいる本はチャールズ・ブコウスキーの『死をポケットに入れて』です。私、中島らもさんがめちゃくちゃ好きで、一気に読まずになるべく長い人生をかけて読んでいこうと決めているんです。そんななか、ブコウスキーは中島らもにちょっと似てるところがあるなと感じて好きになりました。

死をポケットに入れて
死をポケットに入れて』(チャールズ・ブコウスキー:著、中川五郎:訳、ロバート・クラム:画/河出書房新社)

――チャールズ・ブコウスキー、中島らもは、無頼派というか退廃的な方々ですよね。

鈴木:酒! ギャンブル! みたいな感じの世界観が大好きなんですよ。

――鈴木さんとは真逆な世界の人々、という気がします。

鈴木:そうですよね(笑)。真逆だからこそ楽しめるというか。ブログとかではちょっと発信しづらいので、ここでお話しさせていただきました。

――チャールズ・ブコウスキーはどのように知ったのですか?

鈴木:本屋さんで『死をポケットに入れて』というタイトルに惹かれて手に取ったんです。なので、ブコウスキーがどんな方なのかまったく知らずに、運命的な出会いを果たしました(笑)。

――どういった点が魅力なのでしょうか?

鈴木:私のなかで「本は人生の役に立つもの」という想いがすごく強かったんです。でも、ブコウスキーや中島らもに出会ってからは、自分の意識を別世界に連れていってくれるような本を読むのが、癒やしの時間になることに気付いて。

――なるほど、癒やしですか。

鈴木:はい、想像が膨らむ感覚がたまらないです。自分はこんな、ギャンブル漬けの人間には絶対になれないと思うので(笑)。

鈴木絢音さん

グレープフルーツ・ジュース

――では、ぜひもう一冊お願いします。

鈴木:オノ・ヨーコさんの『グレープフルーツ・ジュース』という詩集です。私は時々、絵を描くのですが、その前に読むと感性が広がっていくような感覚になれるのでよく読んでいます。表現したい欲みたいなものを、かき立ててくれる気がするんです。

グレープフルーツ・ジュース
グレープフルーツ・ジュース』(オノ・ヨーコ:著、南風椎:訳/講談社)

――オノ・ヨーコさんの詩の、どういったところに惹かれますか?

鈴木:言葉にするのが難しいのですが、日常に溶け込んでる物事について丁寧に書かれているのが素敵なんです。あと、この詩集は「石の音を録音しなさい」「絵を描きなさい」とか、やることを決めてくれるんですよ(笑)。そういう感じで想像を広げてくれるのが魅力だと思っています。

――ご紹介いただいた2冊ともバッグに入れて持ち歩いていらっしゃいますが、楽屋とかでも読まれるのですか?

鈴木:めちゃくちゃ読みます。ただ、やっぱり後輩ちゃんが話しかけづらいかなと思って、最近はなるべく読まないようにしています。今はなるべく話しかけやすいオーラを出しつつ、みんなの話に耳を澄まして……。

――それで、後輩からもよく話しかけられるようになりましたか?

鈴木:それが、あんまりでして(笑)。話しかけづらいのかなあ。話しかけやすいように意識しているんですけどね。

<第12回に続く>