4月のふくものは、めでたさの象徴「紅白」。赤は太陽と魔除け、白は極楽と清浄を表す/ふくもの暦
公開日:2023/4/1
ごく当たり前に行っている年中行事の一つ一つに、深い意味があります。先人たちは、毎日を縁起よく暮らすために、知恵と工夫をこらし、祈りと願いを重ねてきました。
『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』で紹介されている「ふくもの」とは、福なモノやコト、縁起物のこと。4月は、長寿を招く「初物」、6月は災厄を祓い福を招く「嘉祥菓子」など、その月ならではの「ふくもの」を紹介しています。幸せを授けてくれる「ふくもの」を、暮らしに取り入れる参考にしてはいかがでしょうか。
新入生や新社会人と、「新」がつく方々の晴れの舞台にかかせない、紅白の幔幕。紅白の幔幕が使われるのは、白と赤の組み合わせが、めでたさの象徴となったからです。
※本作品は書籍『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』(本間美加子/マイクロフィッシュ)から一部抜粋・編集しました
はじめに
「ふくもの」=福なモノやコト、縁起物。
この言葉は、2005(平成17)年に発売された『ふくもの』(幻冬舎文庫)から生まれました。そして、日本の縁起物を紹介したこの書籍をきっかけに結成されたのが、イラストレーターの上大岡トメさんを隊長、企画・編集のエビスゆうさんを副隊長とする「ふくもの隊」です。私は何度かふくもの隊のお手伝いをするうちに、日本のふくものとならわしの奥深さにすっかり魅了されてしまいました。
ごく当たり前に行なっている年中行事ひとつ取っても、そこには深い意味があります。古来、私たち日本人が毎日を縁起良く暮らすために、さまざまな知恵と工夫をこらし、祈りと願いを重ねてきたからです。
本書では1月から12月まで、その月ならではのふくものを紹介しています。ふくもの隊が厳選した「手に入れたいふくなモノ・コト」も収録しました。本書を読めば、気になるふくものにきっと出会えるはずです。
さあ、私たちに寄り添い、幸せを授けてくれるふくものをひもといていきましょう。
ふくもの隊隊員 布袋みかこ こと 本間美加子
赤は太陽と魔除け
白は極楽と清浄
新年度がスタートすると、日本各地で入園式や入学式、入社式などが行われます。新入生、新社会人といった「新」がつく方々の晴れ舞台です。そしてこの晴れ舞台にかかせないのが、紅白の幔幕。赤と白を交互に配した縦縞の幕が会場を彩ります。ひと目見ただけで華やかな気分に包まれるのは、古来、赤と白の組み合わせがめでたさの象徴となってきたためです。
諸説ありますが赤は太陽を、白は極楽浄土を表し、天上の世界をイメージさせることがめでたさにつながったと考えられています。また、縁起のいい植物の代表格である梅から取られたとも。誰しもが待ちわびる春を告げる花として愛されている、紅梅と白梅ですね。さらには赤の災厄を除ける力と、白の清浄さがハレの場に必要だったともいわれています。
紅白に彩られた縁起物は、暮らしのあちこちに根付いています。紅白饅頭、慶事の贈り物にかける水引、新年を祝うおせち料理のかまぼこや紅白なます、七五三の千歳飴……。私たち日本人のお祝い事を、赤と白の2色が明るく照らしつづけているのですね。
郷土玩具に家のお守り
神使としても大活躍
比叡山の麓に鎮まる日吉大社(滋賀県)では、毎年4月12日から15日に山王祭が行われます。同社は全国に3800社以上ある山王系神社(日吉神社・日枝神社・山王神社など)の総本宮。山王祭は、絢爛豪華なお神輿が繰り出す勇壮なお祭りです。平安京と延暦寺の守り神として崇敬を集めてきた日吉大社のお使いは、猿。「神猿」と書いて「まさる」と読みます。「魔が去る」や「勝る」に通じることから、同社の授与品のモチーフとしても活躍しています。
語呂合わせやシャレが大好きな私たち日本人は、神猿のほかにも「猿」に「去る」の願いを託したふくものを受け継いでいます。竿に抱きつかせた布製の猿を竹ばねではじいて昇り降りさせる「弾き猿」は、江戸時代に生まれた郷土玩具。災いや疫病をはじいて去らせるお守りでもあります。奈良県奈良市を中心に大切にされているのは、赤い布に綿を入れたぬいぐるみを猿に見立てた「身代わり申」です。病魔や病気を払いのける神様である「庚申さん(青面金剛)」のお使いが猿であることから生まれました。身代わり申を軒先につるせば、我が家に降りかかる災いを代わりに受けてくれます。