4月のふくものは、めでたさの象徴「紅白」。赤は太陽と魔除け、白は極楽と清浄を表す/ふくもの暦
公開日:2023/4/1
ひと口食べれば75日寿命が延びる
目には青葉 山時鳥 初鰹
江戸時代の俳人・山口素堂が詠んだ句です。新緑、ホトトギスの鳴き声、美味しい鰹と、初夏の風物詩を詰め込んだ一句となっています。ここで登場する初鰹は、4月から5月にかけて水揚げされる走りの鰹です。素堂が活躍した江戸時代、初物は縁起物としてもてはやされていました。食べれば寿命が延びるとされ、「初物七十五日」なることわざも生まれたほどです。その季節に初めてとれた農作物や魚介類である初物には、特別な生命力がみなぎっていると考えられたのでしょう。
初鰹と同時季に出回る初物といえば、新茶も忘れてはいけません。唱歌『茶摘み』で歌われているように、八十八夜の頃に収穫の最盛期を迎えます。ちなみに八十八夜は季節の移り変わりを教えてくれる雑節のひとつ。立春から数えて88日目にあたる日のことで、新暦では5月2日頃に訪れます。昔から八十八夜に摘んだお茶は柔らかく、良質といわれてきました。さらに末広がりの「八」が重なることから、この日に収穫したお茶を飲むと長生きできるとも。初鰹と新茶をいただけば、元気と活力をチャージできますよ。
平安貴族の優雅な遊び「貝合わせ」
4月22日の「よい夫婦の日」にちなみ、良縁をもたらす縁起物を紹介しましょう。自分自身や我が子が人生の伴侶に巡り会えるかどうかは、いつの時代も大きな関心事です。相手に求める条件は十人十色ですが、その条件に「ピタリ」と合う人という点は共通しています。そんな願いを引き受けてきたのが、春に旬を迎える蛤です。
蛤の左の殻と右の殻は、ふたつでひとつ。もともと対になっていたもの同士でないかぎり、ピタリと合いません。平安時代の貴族たちはそんな蛤の性質を活かし、とある遊戯を考え出します。たくさんの蛤の貝殻のなかからペアを探し出す「貝覆い」です。やがて「貝合わせ」とも呼ぶようになり、貝の内側を和歌や絵で彩るようにもなりました。数多のお相手のなかから、自分の伴侶を見つけ出す。いつしか日本人は貝合わせに恋愛を重ね、蛤を良縁成就や夫婦円満のシンボルとして大切にするようになりました。雛祭りに蛤のお吸い物をいただくならわしがあるのも、素敵なパートナーと巡り会えるよう願いを込めてのこと。恋愛や夫婦仲に悩んだ時にも、蛤のお吸い物が力を貸してくれるかもしれません。
<第2回に続く>