5月のふくものは「菖蒲、柏餅、粽(ちまき)」。菖蒲の爽やかな香りが災厄や疫病を祓うとか/ふくもの暦
公開日:2023/4/2
ごく当たり前に行っている年中行事の一つ一つに、深い意味があります。先人たちは、毎日を縁起よく暮らすために、知恵と工夫をこらし、祈りと願いを重ねてきました。
『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』で紹介されている「ふくもの」とは、福なモノやコト、縁起物のこと。4月は、長寿を招く「初物」、6月は災厄を祓い福を招く「嘉祥菓子」など、その月ならではの「ふくもの」を紹介しています。幸せを授けてくれる「ふくもの」を、暮らしに取り入れる参考にしてはいかがでしょうか。
5月5日は端午の節句。五月人形や鯉のぼりを飾り、男の子の健やかな成長を願う、端午の節句のルーツは、古代中国で行われていた厄払いの行事です。
※本作品は書籍『縁起のいいモノ、コトを知って開運招福 ふくもの暦』(本間美加子/マイクロフィッシュ)から一部抜粋・編集しました
菖蒲の爽やかな香りで災厄や疫病を祓う
5月5日は端午の節句。五月人形を飾り、鯉のぼりを立て、男の子の健やかな成長を願います。端午の節句のルーツは、古代中国で行われていた厄祓いの行事です。人々は菖蒲やヨモギなどの薬草を浮かべたお酒を酌み交わし、その香気で災厄を祓うよう祈りました。これが日本に伝わると、菖蒲が「尚武」や「勝負」に通じることから、男の子の節句に変化したと考えられています。菖蒲を刀に見立てる「菖蒲刀」や、地面に打ちつけて音の大きさを競う「菖蒲打ち」は昔の遊びとなりましたが、無病息災をもたらす「菖蒲湯」は今もおなじみ。菖蒲の葉をお湯に浮かべれば、すがすがしい香りが全身を包みます。
端午の節句の行事食は、柏餅や粽です。柏餅は日本独自の風習で、新芽が育つまで古い葉が落ちない柏が子孫繁栄の縁起を担いでいます。柏の葉に包まれた餅の中身はこしあん、粒あん、味噌あんなどがあります。一方、粽を食べるならわしは中国から伝わりました。5月5日に亡くなった古代中国の忠臣・屈原を偲び、粽をお供えしたことが由来だそうです。笹の葉の中身が餅米だったり葛粉だったりと、こちらもさまざまなタイプがあります。
四方八方に力強く響く「鶴の一声」
毎年5月10日から16日は愛鳥週間です。期間中、日本に600種以上いるといわれる野鳥を大切にしようと、各地で観察会などが行われます。大空を飛び回る鳥は、古今東西、自由の象徴として愛されてきました。また、時に神様のお使いとなったり、神様を先導したりと重要な役割を担って各国の神話に登場もします。翼をはばたかせて大空を飛翔する姿に天界と地上とを行き来するメッセンジャーをイメージするのは、世界共通なのでしょう。
縁起物としても大人気の鳥ですが、日本の「めでたい鳥」の最たるものといえばやはり鶴です。「鶴は千年、亀は万年」という言葉があるように、長寿のシンボルとして親しまれています。この言葉のルーツは、古代中国の神仙思想。神通力を得た仙人が、千年以上生きる鶴や亀を従えていると考えられていたのです。また、鶴の高く力強い鳴き声は天にも届くといわれてきました。多くの人を従わせるひと言を意味する「鶴の一声」は、鶴のありがたさから生まれた言葉といえるでしょう。さらにつがいとなった相手と一生添い遂げることから、夫婦円満の象徴にもなっています。