5月のふくものは「菖蒲、柏餅、粽(ちまき)」。菖蒲の爽やかな香りが災厄や疫病を祓うとか/ふくもの暦
公開日:2023/4/2

うたた寝をする猫の裏にはのんびり遊ぶ2羽の雀が
日光東照宮(栃木県)は、徳川家康を神格化した東照大権現を主祭神とする神社です。毎年5月17日には春季例大祭が行われ、18日には家康の柩を日光へ移す様子を再現する「百物揃千人武者行列」が開催されます。
江戸時代の職人が造営した社殿の数々は定期的に修繕を繰り返し、今もその姿をとどめています。特に家康の墓所である奥宮への入り口となる坂下門と、門に彫られた「眠り猫」は東照宮のシンボル的存在です。眠り猫の作者は伝説の名工・左甚五郎。その名の通り眠る猫をかたどった木彫りの彫刻で、国宝にも指定されています。坂下門の上部にある眠り猫の下をくぐり、眠り猫の方を振り向くと、そこには仲良く竹林で遊ぶ2羽の雀の彫刻が。そう、眠り猫は「のんびり遊ぶ雀」と「うたた寝をする猫」が対になっているのです。その姿は、家康のもたらした平和と安定を表すとも、強者が弱者を虐げない共存共栄の世を表すともいわれています。また、奥宮に災厄が入り込まないように門を守っているという説もあるため、眠り猫の置物を玄関に置けば、頼もしい門番となってくれそうです。

目にも鮮やかな南蛮渡来のお菓子が起源
5月24日は、おせちとしてもおなじみの伊達巻の日です。正月から5か月が過ぎた今頃に?と不思議に思いますが、戦国武将・伊達政宗の命日に由来しています。一説によると伊達巻は、伊達政宗の好物だったそうです。
さて、おせちは正月に食べる特別なごちそうです。それぞれの料理が縁起を担いでおり、めでたさを重ねる意味で重箱に詰めます。巻物に似ている伊達巻は、知恵や文化の象徴。学業成就や文化興隆への願いが込められています。
ところで、伊達巻のルーツはどこにあるのでしょう。実はポルトガルの「トルタ・デ・ラランジャ」というお菓子が関係しています。卵黄や砂糖にオレンジの果皮と果汁を混ぜて焼き、くるりと巻いた山吹色のロールケーキです。このお菓子が南蛮貿易の窓口となった長崎に伝わると、現地の職人たちが再現を試み、「カスティラかまぼこ」が生まれました。鮮やかな色はそのままに、長崎の海の恵みである魚のすり身や味醂などが加わり、晴れがましいおかずへと昇華したのです。やがてカスティラかまぼこは、和洋中を折衷した卓袱料理のひと品として江戸の町に伝わるなかで、「伊達巻」に変わったといわれています。
<第3回に続く>
