6月のふくものは「蛙」。「無事帰る」や「苦境を変える」など、さまざまな字を当てて幸せを招く/ふくもの暦
公開日:2023/4/3
6月16日は「和菓子の日」
かつて日本で行われていた「嘉祥」というならわしをご存知でしょうか。旧暦6月16日に神様にお供えしたお菓子や餅を食べ、疫病除けを願う行事です。一説には平安時代初期、仁明天皇が旧暦6月に元号を「嘉祥」と改めた際、神様に16個のお菓子を供え、世の平穏を祈ったのがルーツといわれています。また、室町時代の武士たちが旧暦6月16日に弓遊びで勝負し、負けた者が勝った者に食べ物を奢っていた風習を起源とする説もあります。
時の権力者たちも嘉祥を大切にし、江戸時代には将軍が家臣にお菓子を下賜する年中行事として定められました。町民や農民の間では16文で和菓子や餅を買い、健康を願って無言で食べる「嘉祥喰」が親しまれていたようです。このように身分を問わず暮らしに根付いていた嘉祥ですが、明治時代以降は忘れられた行事となっていきました。しかし1979(昭和54)年、全国和菓子協会が6月16日を「和菓子の日」と定め、嘉祥のならわしを現代によみがえらせました。和菓子の日には、各地の和菓子店に除災招福を願う嘉祥菓子が並びます。めでたい和菓子で災厄を祓い、口福と幸福を招きましょう。
夏越の祓には神前で茅の輪をくぐる
6月30日は、元日から半年が過ぎた節目の日。各地の神社では、この半年の間に身についた罪や穢れを祓い、無病息災を願う「夏越の祓」を行います。夏越の祓に合わせ、イネ科の茅でできた「茅の輪」をしつらえる神社も多くあります。茅の輪をくぐれば罪と穢れが祓われ、夏を乗り切る英気を授かれるそうです。ここで、茅の輪くぐりの起源となった神話を紹介しましょう。
あるところに、蘇民将来と巨旦将来という兄弟がいました。ある日、ふたりのもとに神様が現れ、一夜の宿を貸してくれるように頼みます。巨旦将来は断り、蘇民将来は神様を精一杯もてなしました。蘇民将来に感心した神様は、「これから疫病が流行したら、蘇民将来の子孫である証として茅の輪を身につけておけば助ける」と言い、去って行きました。
各地に伝わる「蘇民将来之子孫也」と記されたお札やお守りも、この神話から生まれたものです。夏越の祓に、茅の輪を模した災厄除けのお守りを授与する神社もあります。疫病を除けるふくものとして、昔も今も大いに頼りにされているのです。