「本当に有害図書。子どもには見せられません」ランジャタイ国崎が愛してやまない漫☆画太郎を語る【私の愛読書】
更新日:2023/4/1
このたび、「国崎☆和也」名義で初のエッセイ集『へんなの』(太田出版)を上梓したお笑いコンビ・ランジャタイの国崎和也さん。子どもの頃から多くのマンガを愛読してきた、マンガ好きとしても知られている。
そんな国崎さんに愛読書を聞いてみると、次から次へとマンガ家の名前が……。中でも、人生に影響を与えたマンガ家はやっぱり「あの人」だった。
取材・文=野本由起 撮影=島本絵梨佳
母親が築いたマンガの山に、ザッと腕を入れて引っ張り出して読んでました
──国崎さんは、プロフィールに「趣味:マンガ」と書くくらいマンガがお好きだそうですね。これまでの人生でも、マンガからいろいろな影響を受けているようです。
国崎:そうですね。小学校は『キャプテン翼』(高橋陽一/集英社)の影響でサッカー部に入ってました。中学校では『SLAM DUNK(スラムダンク)』(井上雄彦/集英社)を読んでバスケ部に入って、高校は『テニスの王子様』(許斐剛/集英社)を読んでテニス部。夏休みにもう一度『SLAM DUNK』を読み返してテニス部を辞めてバスケ部に。で、高2の時に『ヒカルの碁』(ほったゆみ:原作、小畑健:漫画/集英社)にハマって、バスケやめて囲碁部に入ってますから。もう、マンガに左右された人生です。
──その行動力もすごいですね。
国崎:すぐ部活を辞められる高校だったんですよ。全員、全然力を入れてなかったので、すぐ辞められましたね。
──マンガを選ぶ時の基準はあるのでしょうか。
国崎:もう何でも読んじゃいますね。母親がマンガ大好きで。「ねっとこ」っていう部屋があるんですけど。
──「ねっとこ」?
国崎:あれ、「ねっとこ」って言いません? 寝るところなんですけど。もともと寝るところだったんですけど、母親がマンガを置きすぎて、もうきったないんですよ。廃品回収の集積所、行ったことあります? あそこに本のゴミの山があるんですけど、ああいう感じで「ねっとこ」にめっちゃマンガが積まれてて。子どもの頃は、そのゴミ山みたいなところにザッと腕を入れて、マンガを掴んで引っ張り出して。それを読んでました。ランダムなんですけど、それが好きで。
──そこにはどんなマンガがあったのでしょう。
国崎:ほんと、いろいろありましたね。昔の少女マンガも結構ありましたし、『ブラック・ジャック』『火の鳥』みたいな手塚治虫さん(※注1)の作品もありました。
──中でもお好きなのは、どんなマンガでしたか?
国崎:自分で選ぶようになってからは、松本大洋さんが好きです。中学時代に、確か『ピンポン』(小学館)から読み始めたのかな。映画から入ったんですよ。映画がめっちゃ面白くて、そこから本屋さんで売られていたマンガを手に取って。読んだら、それがむっちゃくちゃ面白くて。『ナンバーファイブ』(小学館)も好きです。あ、松本大洋さんが雑誌に『ドラえもん』の短編を描いたこともあって、それも面白かったですね。もう全部好きです。
あとは、『浦安鉄筋家族』(秋田書店)の浜岡賢次さん。伊藤潤二さんの『うずまき』(小学館)も好きですね。東京に来てから読んだんですけど。当時、相方(伊藤幸司さん)が中野に住んでたから「まんだらけ」っていう店に行ったんです。そこで伊藤潤二さん特集をやっていて、めっちゃくちゃ面白いなと思いました。ホラーなんですけど、笑っちゃいますよね。そういう意味では、楳図かずおさんも好きです。『まことちゃん』(小学館)、『猫目小僧』(小学館)……いろいろありますね。
藤子不二雄A先生(※注2)の『まんが道』(小学館)も好きです。あ、先生の作品だと『少年時代』(小学館)もめっちゃ面白いんですよ。戦時中、疎開先でガキ大将からいじめに遭うんですけど、主人公はいじめられるのが嫌だからよいしょをするんですよ。ガキ大将をよいしょをしつづけて終わる巻があって、それがどうしようもなくてめっちゃ面白いんです。
読むと、もうどうでもよくなる。考えすぎな人におすすめです
──中でも、国崎さんの人生を変えたマンガを挙げるならどの作品でしょう。
国崎:そうなると、やっぱり漫☆画太郎先生ですね。僕のエッセイ集『へんなの』にも、『画太郎先生だぁ~い好き♥』(秋田書店)のマンガを掲載させてもらいましたから。それだけ好きって言っておいて、あえて違うマンガ家さんを挙げても面白いんでしょうけど(笑)。
──特にお好きな作品はありますか?
国崎:なんだろう……。たくさんありますね。まず、小学生の時に初めて『道徳戦士超獣ギーガー』(集英社)を読んで衝撃を受けて。『画太郎先生だぁ~い好き♥』も好きですし、他の作品も好きなんですよね。
──人生観が変わるくらいの衝撃があったんですよね。
国崎:ありましたねー。びっくりしました! 画太郎先生のマンガって、毎回同じ展開なんです。もう半分くらい一緒。毎回階段を転がり落ちて、トラックにはねられて、爆発して終わるんですよ。絵も変わらない。どの新刊を読んでも、大体それで。
今「ジャンプ+」で『漫古☆知新-バカでも読める古典文学-』(集英社)って新連載をやっているんですけど、1話目から同じ展開でしたから。もう衝撃が走りましたよ。『猿カニ合戦』の栗と臼と蜂がトラックを運転して「イヤッホーーーッ!!!」って人をはねて、「ウギャーーーッ!!!」って突っ込んで爆発する。本当に一緒なんですよ。びっくりすると思います。
──何度読んでも笑えますよね。
国崎:そうなんです。愛読書、これにしましょう。今、画太郎先生が連載してる『漫古☆知新-バカでも読める古典文学-』。
──国崎さんのエッセイ集『へんなの』(太田出版)に掲載された『画太郎先生だぁ~い好き♥』は2009年に刊行されていますよね。ずっとこの作風なのもすごいです。
国崎:そう。今2023年ですからね。10年以上ずっと同じことやってるんですよ。新連載だっていうから読んでみたら、「またやってる」って。信じられないです。笑っちゃいますよね。
今回、自分の本を母親に10冊くらい送ったんですよ。親戚に配る予定だったんですけど、巻末の画太郎先生のマンガを読んだ母親が「これ、親戚の子には渡せない」って。笑っちゃいましたね、もう有害図書じゃないですか(笑)。僕の本、小学校の図書室とかに置けるんですかね。
──置けないと思います(笑)。
国崎:ですよね(笑)。
──『漫古☆知新-バカでも読める古典文学-』で特に好きなのは、どのあたりですか?
国崎:画太郎先生の作品は、『世にも奇妙な物語』みたいなマンガとかいろんなものがあるんですけど、結局最後は主人公がアパートの入り口から出てきて、階段をつるんって滑って落ちていく。毎回どうやったって、この最後になるのが好きですね。で、最後は先生が館で待ってるんですよ。「いかがでしたか?」みたいな。
新作だと、それがもっとひどくなってて。「うるせえ、バカヤローッ!!!」「死ねーーーッ!!!」って言って、自分のくそを読者めがけて噴射するんです。最悪なんですよ。本当に有害図書(笑)。僕は面白いんですけども、子どもには見せられませんよ。
──どういう人におすすめしたいですか?
国崎:考えすぎな人におすすめしたいですね。読むと、もうどうでもよくなる(笑)。「私、何を迷ってたんだろう」「なんでこんなこと考えてたんだろう」って我に返ると思います。すごいパワーですよね、画太郎先生の作品は。
※注1 手塚治虫さんの「塚」は旧字体の「塚(塚にヽ)」が正式表記です
※注2 藤子不二雄Aさんの「A」は「丸囲みA」が正式表記です