前田敦子さんが選んだ1冊は?「一人で頑張ろうとしていたときに読んだ一冊。加賀さんの生き方に励まされました」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/4/14

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年5月号からの転載になります。

前田敦子さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、前田敦子さん。

(取材・文=松井美緒 写真=TOWA)

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 前田さんはこの大好きな加賀まりこさんのエッセイを、「私、これでいいのかな」と悩んでいる人にぜひ薦めたいと言う。前田さん自身、AKB48を卒業して一人で頑張ろうとしていた時期に手に取った。

「加賀さんのかっこいい生き方に、すごく励まされました。縮こまって型にはまる必要なんかない。自分の思う通りに進んでいいんだと」

 常にスターの座にあった加賀さんだが、女優として成長する過程での苦労についても本の中で語っている。前田さんもやはり仕事の上での悩みや壁はあったのだろうか。

「AKBでは劣等感の塊でした。周りの子と比べられながら切磋琢磨できる場所ではあったけれど、その分、自分に足りないものが浮き彫りになって。辞めたあとは、実力がお仕事に追いついていないと特に焦っていたと思います」

 経験を経て、今は自分の居場所を何となく見つけられている気がする。加賀さんとの共演は残念ながらまだだけれど、この本から学んだのは。

「やりたいと思ったことは、チャレンジする。出会いは運命ですし、そこに躊躇なく飛び込んでいく勇気と実行力は、役者のお仕事にとって本当に大切だと思います」

今、前田さんが主演を務める連続ドラマW-30 「ウツボラ」が放映中だ。謎の女性、朱と桜を前田さんが一人二役で演じ話題を呼んでいる。

「現実と幻想、その狭間にあるような原作マンガの世界観がこの上なく素晴らしくて、それを壊したくないと。私の中ではまったく初めてのアプローチでした」

 その“初めてのアプローチ”とは。

「私らしさみたいなものをどこまで消せるか、という作業です。原作が教科書で、常に台本と原作を照らし合わせながら、役を自分に、ではなく、自分を原作に寄せていく。その上で映像ならではの人間味をどう加えるか、共演者の方たちとも話し合って。大変でしたが、とても楽しかったです」

 朱の死と盗作の真相、朱と桜と溝呂木、3人の関係性の真実、さまざまな楽しみ方ができる『ウツボラ』だが、前田さんが感じた一番の魅力は。

「“愛”の本質を描いた作品だと思うんです。いろいろな謎が絡み合って一見複雑ですが、実はシンプル。登場人物一人一人が、真っ直ぐに愛するものを持っていて、純粋にそれを追いかけている。そしてときに自分を見失う。故に美しく、哀しいのだと思います」

ヘアメイク:高橋里帆(HappyStar) スタイリング:清水恵子(アレンジメントK) 衣装協力:シャツ、スカート共にFRAPBOIS(TEL 03-5728-5120)、リング CALLMOON(CINCH)(TEL 03-5761-6348)、ピアス、シューズ共にスタイリスト私物

まえだ・あつこ●1991年、千葉県生まれ。2007年、『あしたの私のつくり方』で映画デビュー。近年の主な出演作に、映画『旅のおわり世界のはじまり』『葬式の名人』『コンビニエンス・ストーリー』『もっと超越した所へ。』『そして僕は途方に暮れる』など。23年は出演映画『あつい胸さわぎ』公開予定。

連続ドラマW-30「ウツボラ」

連続ドラマW-30「ウツボラ」

原作:中村明日美子『ウツボラ』(太田出版) 出演:前田敦子、藤原季節、平 祐奈、おかやまはじめ、武田航平、雛形あきこ、渡辺いっけい、北村有起哉 毎週金曜午後11:30 WOWOWプライム放送中 WOWOWオンデマンド配信中
●謎の死を遂げた「朱」。人気作家・溝呂木の前に彼女の双子の妹と名乗る「桜」が現れた。実は溝呂木は、「朱」の小説『ウツボラ』を盗用していた。