どこかの誰か、僕のように塞ぎ込んでいる、才能はないけど真面目にしか生きていけない誰かへ/スターにはなれませんでしたが①

文芸・カルチャー

公開日:2023/4/8

スターにはなれませんでしたが』(佐藤満春/KADOKAWA)第1回【全5回】

 オードリーや日向坂46メンバーなど多くの人気芸能人から信頼を集める佐藤満春氏が自身初の書き下ろしエッセイを刊行!「ヒルナンデス」「オードリーのオールナイトニッポン」など人気番組19本を数える放送作家のほか、お笑い芸人、トイレや掃除の専門家、ラジオパーソナリティ……といった様々な顔も持ち合わせる“サトミツ”の人生観や仕事観、芸人観を綴ります。さらに本書には若林正恭(オードリー)、春日俊彰(オードリー)、松田好花(日向坂46)、DJ松永(Creepy Nuts)、山里亮太(南海キャンディーズ)、安島隆(日本テレビ)、舟橋政宏(テレビ朝日)という豪華メンバーとの特別対談も収録。発売後即重版となり話題沸騰中の本書の一部を、5回連載でお届けします。

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スターにはなれませんでしたが
スターにはなれませんでしたが』(佐藤満春/KADOKAWA)

はじめに

 誰のための本か。

 お笑い芸人や放送作家、掃除・トイレの専門家として活動しております、佐藤満春と申します。

 本を出すことになりました。

 トイレでも掃除でもなく、僕自身の仕事や生活、生き方についてまとめた、それだというお話。

「いやいや、僕なんてそんなそんな! 大した人生じゃないので!」

 みたいなことは、いつも通り何かしらの言い訳でもするように感じていたものの、KADOKAWAの遠藤さんからお話をいただいたときに「やりましょう」と即レスしていたのは、僕の中に、何かそこに対する手応えらしきものがほんの少しだけあったからだと改めて。

 近年、雑誌やネットの記事でインタビューをしていただく機会が増えました。

 個人的な想定よりそれなりに反響をいただいたのは「静かなやつが急にしゃべりだした時」の期待感兼恐怖感みたいなものだったりもしたのかもしれません。

 余計なことは話さないので「口が堅い」とよく言われますが、自分自身のことはなおさらあまり話してきませんでした。

「誰が知りたいんだよ」は事実でもあり、自分に対する言い訳でもあるのは重々承知。

 影が薄い。
 地味。
 存在感がない。
 趣味も特技もない。
 大勢の中で委縮する。

 芸能人としては致命的なこの僕の特徴こそが、僕の根幹を作っています。

「全く楽しいことがない」とため息をついてばかりの日常ではあるけど、「そろそろ自分を愛して自分を信じていってもいいのでは?」、そう思えたのはそう思わせてくれた人との出会いがあったからでしょう。

 後述しますがここ数年で言われて一番嬉しかったのは、親友、いやそれ以上の何かしらの関係であるオードリー若林正恭から言われた「サトミツはそろそろ自分のこと認めてあげてもいいんじゃない?それくらいの結果出してると思うし」という割と長めな一言だったりもして。

 誰のための本か。

 国民全員に読んでもらおうとは全く思いません。

 ただ、どこかの誰か、僕のように塞ぎ込んでいる、才能はないけど真面目にしか生きていけない誰かのために。

 僕が周りの人からの言葉で気づけたように、誰かにとって、自分を認めるきっかけになってもらえると幸いです。

 そして何より、僕自身のための本でもあります。

 45歳、そろそろ自分を肯定してあげる時期なのかもしれないと。

 うまくできるかどうかは、さておき、ですが。

<第2回に続く>

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