日向坂46愛を語る。勝手に遠い親戚のおじさんの目線になるのは、「応援したくなる何か」が彼女たちにあるから/スターにはなれませんでしたが③
公開日:2023/4/10
『スターにはなれませんでしたが』(佐藤満春/KADOKAWA)第3回【全5回】
オードリーや日向坂46メンバーなど多くの人気芸能人から信頼を集める佐藤満春氏が自身初の書き下ろしエッセイを刊行!「ヒルナンデス」「オードリーのオールナイトニッポン」など人気番組19本を数える放送作家のほか、お笑い芸人、トイレや掃除の専門家、ラジオパーソナリティ……といった様々な顔も持ち合わせる“サトミツ”の人生観や仕事観、芸人観を綴ります。さらに本書には若林正恭(オードリー)、春日俊彰(オードリー)、松田好花(日向坂46)、DJ松永(Creepy Nuts)、山里亮太(南海キャンディーズ)、安島隆(日本テレビ)、舟橋政宏(テレビ朝日)という豪華メンバーとの特別対談も収録。発売後即重版となり話題沸騰中の本書の一部を、5回連載でお届けします。
地元の友人に30年ぶりくらいに会いました。中学卒業以来です。彼は一緒にサッカーをやっていた仲間で、SNSで僕の活動を追ってくれていたそうです。
その彼は、会うなり僕に「ラジオ聴いてるよ」「掃除のロケ見たよ」と感想を語ってくれたのですが、最後に「ラジオ聴いていたら、満春が若いアイドルの子と仲良さそうにしゃべっていて、なんか嫉妬しちゃったよ」と熱弁され…。ああ、アイドルグループは僕らの地元の層にもしっかり刺さってるのだなと思ったところ、「地元の満春が若い子と楽しそうにしていて悔しかった。俺たちのほうが満春の良さを知ってるから」と、割と本気で語っていたのを聞いて、なんだか嬉しくもあり微笑ましくもあり、にやにや笑ってしまったことがありました。
オードリーがMCをやっているテレビ番組「ひらがな推し」(※現「日向坂で会いましょう」)で日向坂46というグループのファンになりました。「推し活」なんて言葉で表現していいのかわかりませんが、彼女たちの飛躍を励みに、仕事を、私生活を、頑張っていく活力をいただいています。お仕事でご一緒させていただいたり、ライブを見に行ったりすることも。
何が魅力なのか。言語化したことはなかったのですが、やっぱり純度の高くないものもたくさん見てきたこの芸能界において、「こんなにピュアに夢に向かっている人がいるのか‼」という衝撃。一番はそこじゃないでしょうか。
僕はアイドル全般に詳しいわけではないのですが、ここまではっきりと明確な下積み時代を経て、羽ばたいていく姿を隣で見させていただけたのは貴重な経験でした。そこまで初期から知っているわけではありませんし、グループの歴史もメンバーの皆さんのことも特別詳しいわけではありません。それでも東京ドームに向かうまでの過程は心を打たれましたし、とってもドラマチックだったように思います。
そのファーストインパクトとなったバンジージャンプロケでは、バンジーに挑戦することになったメンバーの皆さんが、励ましあいながら跳ぶ瞬間を迎え、「自分」を乗り越えて「メンバーファースト」で跳んでいきます。勢いをつけるために最初に手をあげてメンバーにその姿を見せるキャプテン、佐々木久美さん。とっても苦手なのに小さな縁石から何度もシミュレーションをしてついに跳ぶことに成功した齊藤京子さん。綺麗なフォームで跳んで拍手喝采。直後のインタビューではモノマネで現場を盛り上げてくれた松田好花さん。そして僕にメンバー1人1人のいいところを教えてくれた、もう卒業された井口眞緒さん(笑)。長時間のロケはカメラの回っている回っていないの境目がなくなる瞬間がたくさんあるのですが、その全てにおいて皆さんの絆を感じた日となりました。いや、これもう泣いていいでしょ。
ロケにお邪魔する度にそういった状況を目にするので本当にどうしたらあんないい子たちが育つのか知りたくなるほど。勝手に遠い親戚のおじさんの目線ですが、「応援したくなる何か」が彼女たちにはあるのでしょう。ピュアの塊のような何か。そこで元気をいただいた分、僕は僕で仕事を頑張ろうと思う毎日です。子どもが生まれて涙もろくなったように、彼女たちの一挙手一投足全てが感動のトリガーになり、わけのわからないタイミングで泣いてしまい、ご迷惑をおかけすることもあります(笑)。
アイドルという職業はファンタジーでもあるので、彼女たちと本音で話すようなタイミングはもっともっと先になるとは思うのですが、その時を楽しみにしています。
僕はラジオが好きなので「ラジオをやりたい」メンバーは特に!!! 注目しているところがあって。松田好花さんは思考的にも「日向坂で会いましょう」においても、家型と呼ばれることがあって、いつの間にか「佐藤満春の一番弟子」というポジションにいてくれてます。勝手に僕もそう呼ばせてもらったり。オードリーのラジオのリスナーでもあることから、自然と感覚的には近くにいる人でした。
2021年に始まったラジオ番組「松田好花の日向坂高校放送部」の、元となる企画案を最初に出したのは2年ほど前。彼女にはニッポン放送でラジオをやってほしいと(勝手に)思っていたこともあったし、「ラジオを好きすぎてリスナーの時間が長くなると始めるのが難しくなる」という僕の持論から考えて、いち早くしゃべる側の人になってほしかったんですね。
松田さんは好きなものに対して実直で、真っすぐなところがすごく魅力的だと思います。繊細な部分があるのに、しっかりした芯の強さもあり。様々な経験を糧に、楽しく大きく羽ばたいてほしいなと思っています。あの長期休養の時期は、それはそれは辛い時期だったと思うのですが、彼女がさらにスターになり、さらに人に愛されるために必要な時間…だったのかもしれません。若林君や春日を見ていても、そういうタイミングがあったので。どうしてもスターにはそういうことが起きるもんなんだよなあ、と。
すごくいいなと思ったのは、彼女が休養明けの収録の時に、A4の紙にびっしり埋め尽くされた新コーナー案と自分の反省点とアイデアの種を持参してくれました。真剣な顔でそれらをプレゼンしてくれて、「あー! 素敵! 最高!」と何度も思った記憶。番組は順調で好評なのですが、番組と向き合うタイミングにおいて、自分の意思や意図をちゃんと伝えてくれたのがとても嬉しかったんです。信頼関係って目に見えないから、そう主張しても大丈夫だと思ってもらえた時点でとても嬉しく。そして考えてくれたコーナーもお見事で、さすが一番弟子なのだなと。
僕が十数年ラジオを制作する仕事をしてきて、番組のことを1から考えて新コーナー案を持ってきたパーソナリティは松田好花ただ1人です。あの日は嬉しかったなあ。これぞまさに佐藤満春の一番弟子という言葉を体現するムーブ。今後も素敵なラジオをとにかく楽しんでください。
あとは潮紗理菜さん。ラジオに向いていて、ご本人もラジオを好きだと言っていたので、「潮さんの番組がどこかで始まるといいな」と思って企画を出し続けてます。潮さんは特に近年、人間味・人間力が溢れまくっていて、そこに存在するだけで周囲を全て巻き込んでいけるパワーがあるので、ラジオでもその魅力がたくさん伝わるでしょう。いつの日か!縁があれば急にやってくるものなので、落ちていないか探ります。
京子さんは「キョコロヒー」でお世話になっていて、あの子もすごく変なところがあるけれど、ちゃんと自分の夢は明確にあって、そこに向かって突き進むパワーには魅了されるしかありませんでした。
僕が京子さんのことを好きな理由は、「仕事後はいち早く帰る、今日もすぐ帰りたい」と明言すること。最高。僕もそうだから。
1人ずつ書き出したら別の本になってしまうのでここで終わらせますが、日向坂46の皆さんにも感謝しかありません。
ともかく、皆様どうか健康で! これからもどうぞよろしくお願いします。
そしてもちろん、そのきっかけをくれた「日向坂で会いましょう」のスタッフさん達にも大感謝です、なんかついでになってしまったけど…。
<第4回に続く>