チェーホフ『ワーニャ伯父さん』あらすじ紹介。「人生終わった…」才能に惚れて貢ぎ続けた相手に幻滅。絶望する伯父さんを救ったのは…?
公開日:2023/4/12
チェーホフの『ワーニャ伯父さん』は後に舞台化・映画化もされた作品ですが、詳しい内容については分からないという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は『ワーニャ伯父さん』について、全4幕のストーリーに沿って分かりやすく解説します。

『ワーニャ伯父さん』の作品解説
『ワーニャ伯父さん』はロシアの劇作家アントン・チェーホフによる戯曲で、「チェーホフ四大戯曲」と呼ばれる作品の一つです。1897年に発表された後、2年後の1899年にモスクワ芸術座で初演されています。
内容は、セレブリャコフ教授の領地を25年間管理してきたワーニャが、領地に戻ってきた教授との間で起こした騒動と、その結果による行動を描いたものです。全4幕から構成されています。
『ワーニャ伯父さん』の主な登場人物
ワーニャ:本作の主人公。ヴォイニーツカヤの息子。エレーナに思いを寄せる。
ヴォイニーツカヤ:ワーニャの母親。
セレブリャコフ:退職した大学教授。ワーニャの義理の弟。
エレーナ:セレブリャコフの現在の妻。
ソーニャ:セレブリャコフと先妻(ワーニャの妹)との娘。ワーニャの姪。
アーストロフ:医師。ワーニャの友人。エレーナに恋をしている。
テレーギン:地主。
『ワーニャ伯父さん』のあらすじ
ワーニャは亡くなった妹の夫であるセレブリャコフ教授を尊敬し、領地の差配や利益の仕送りなどを続けてきた。しかし、若い妻を連れ、定年で領地に戻ってきた教授は身勝手な態度で困らせることばかり。そんな教授を見て嘆きと徒労感を覚えていたワーニャだが、実は教授の妻のエレーナに恋心を抱いていた。
ワーニャは、教授の才能に惚れ込んで、仕送りのために土地の管理に専念して若い頃を無駄に過ごしたことを嘆き、愚痴をこぼす。その言動を受けた母であるヴォイニーツカヤ夫人との間で対立が起こりかけるが、姪のソーニャによって事態が収拾される。
後にセレブリャコフが領地を売り払う提案をしたことについて、25年にわたって土地を管理してきたワーニャが反発。折り合いがつかずに両者が別れた後、再び話に向かったセレブリャコフに対してワーニャがピストルを続けて発砲。しかし、弾は逸れ、ワーニャは怒りにまかせて、ピストルを床へ投げつける。
自殺をしないように、ピストルを隠されたワーニャはアーストロフ医師からモルヒネのビンを盗み出すが、ソーニャに止められて薬のビンを返却する。
結局、セレブリャコフとエレーナは馬車で領地を離れる。生きるのが辛いと言うワーニャに対し、一緒に残ったソーニャは「運命が送ってよこす試練にじっと耐え、生きていきましょう」と諭し、ふたりは現状の悩みに耐えていくことを決めるのだった。
<第67回に続く>
