結果につながる議事録は会議前に6割作る!? べテランコンサルが教える「働きがい」を持てる仕事術

ビジネス

公開日:2023/4/17

コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル
コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル』(メン獄/文藝春秋)

 まもなくゴールデンウイーク。読者の皆さんの中にはこの1カ月ほどで、新しい社員を迎えた方や、新しい仕事場に入った方は多いと思います。ご紹介する『コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル』(メン獄/文藝春秋)は、Twitterやnoteで人気を博す著者・メン獄氏が大手コンサルティング会社に約12年勤めた経験をもとに「働きがい」について書いた一冊です。冒頭では、主にコンサルティング会社で切磋琢磨している人やこれからコンサルティング会社で働くことを目指す人に宛てて書かれたと紹介されていますが、業種を問わず仕事のためになる「ひたむきさ」の会得方法が示されています。

 著者の社会人デビューは2009年。コンサルティング会社は近年女性ファッション誌などを中心に「理想的な職業」として取り上げられるようになったものの、著者の新入社員当時は証券会社や広告会社と並んで激務の象徴とされていたと述懐しています。そんな自身の過去を時には自虐的に振り返りながら、著者はどのように学生生活とはかけ離れた「別世界」や「スゴい上司たち」に食らいついてきたかを本書で綴っています。

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 コンサルタントの基本はまず「速い」ということ。そして、相談相手が知らない情報や価値を提供して、話をリードしてくれることにあるといいます。著者はまず、配属が決まって早々に、上司たちのタイピング速度に圧倒されます。

まず物理的なタイピング、PCの操作が異常なほどに速かった。オフィスの中でマウスを使っているのは私だけであり、先輩たちはPCに向かう際、マウスを一切使わなかった。
当時、会社では海外拠点での研修が頻繁に開催されていたのだが、日本オフィスのメンバーがマウスを使わずに、さまざまなショートカットを駆使してExcelを操作しているのを見て“wizard…(まるで魔術師だ)”と感嘆の声が上がるほどだった。

「飲んだ後にふと目を覚ましたら道路の中央分離帯に寝ている」「オフィスのイスを連ねて眠るテクニックが著しく発展した」というような怒涛の日々を過ごしつつも、著者はコンサルタントの何たるかを必死に吸収していきます。たとえば、結果につながる議事録を作るには、会議前に6割程度の議事録を書き終えておくべきであるということ。これは言い換えると、必ず自分の仮説と、自分が説明する内容でクライアントをどう誘導するかのプランを持った状態で会議に臨む必要があるということです。

 ひたむきな努力を積み重ねてきた著者の記録の数々は、議事録、パワーポイント、エクセル等の資料や日々のコミュニケーションからしっかりと結果を紡ぎ出す実践的テクニックなども織り交ぜながら、本書の終盤で「『変化』をつくれる社員になろう」というトピックにたどり着きます。

コンサルタントは事業の展望の書かれた資料を、時に業務改革を、先端的なシステムの実装を売る。それら一つひとつのサービスを通してコンサルタントがクライアントに売っているものは、事業全体に対する「変化」なのだ。
そしてこの点こそが、単発のシステムの導入や移行のみを売り物とする他の会社との差別化要素であり、それ故にコンサルタントの月単価は高額となる。

 このように、本書ではコンサルタントの業務、思想について紹介されつつもさまざまな職種に通じる教えが説かれています。そこからはAIやDXによるオートメーションがどんどん推進された先に人々が掲げるべき働きがいの一例は「変化を作る」ことだ、という一般解を得ることもできます。社会人1年目や、新しいポストに就いたばかりの方には特にお勧めしたい一冊です。

文=神保慶政