「ぼのぼの」シリーズ待望の新作絵本が16年ぶりに発売!『ボクたちの森のこと』

文芸・カルチャー

公開日:2023/4/15

ボクたちの森のこと
ボクたちの森のこと』(いがらしみきお/竹書房)

「16年ぶりに「ぼのぼの」の絵本が発売でぃ~す!!」

 こんなシマリスくんのセリフが聞こえてきそうなニュースが飛び込んできた。累計発行部数900万部を超える大人気コミックス『ぼのぼの』の新作描き下ろし絵本『ボクたちの森のこと』(いがらしみきお/竹書房)が発売されたのだ。これは16年ぶりとなる「ぼのぼのえほんシリーズ」である。

『ぼのぼの』は、ラッコの子ども・ぼのぼのと森の仲間たちの日常を描いた4コマ漫画。1986年から連載が続いており、累計発行部数は900万部以上(2023年4月時点)。映画化やテレビアニメの放映、ゲーム化など、さまざまなメディア展開が行われており、老若男女問わず、長きにわたって愛されているロングヒット作品だ。

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 物語は、ぼのぼのたちとさまざまな動物たちとの交流を通して、自然とのかかわり方や生き物との共生の大切さを描く。不条理なギャグ、ほんわかとした空気感、癒し系のキャラクターが魅力のひとつ。さらに大人も考えさせられるような現実の社会問題の描写や、名言集として書籍にもまとめられた哲学的なセリフにも注目が集まるなど、さまざまな表情をもっている。

 その独特な作風そのままに、作者のいがらし氏自らが絵本にしたのが「ぼのぼのえほん」。本作はファンならば間違いなく楽しめるし、『ぼのぼの』を読んだことがない人にもおすすめしたい。ぼのぼのの魅力がしっかりと注入されているだけでなく、絵本としてのアイデアもストーリーもハイレベルだからだ。

ボクたちの森のこと P

親子で楽しい!ぼのぼのたちと遊べる知育絵本

 ページをめくると、ぼのぼのたちの住む森が目に飛び込んでくる。フルカラーで細かくキャラクターや森の全体像が描きこまれており、「ぼのぼのたちが生きる世界」への没入感がすごいのだ。

 またページの構成にアイデアがあり、左ページに森の中で起きていることが見渡せるイラストが、右ページに森で起きていることを書いたお話が配置されている。

ボクたちの森のこと P10

ボクたちの森のこと P11

 つまり「ぼのぼのはどこにいるかな?」「クズリくんのウンチをたどってみよう!」「スナドリネコさんは何匹魚がつれたかな?」など、物語を読み進めると同時に「探す」「見つける」「追いかける」といった遊び方もでき、また左ページはパラパラ漫画にもなっている。『ボクたちの森のこと』は、さまざまな楽しみ方ができる知育絵本なのだ。

 ぜひ、ぼのぼのたちがどこで、だれと、何をしているのか探してほしい。見つけられないと“しまわれちゃう”かもしれない!

森の中で何が起こる? ラストに待つのは、ちょっとしたカタルシス

 ぼのぼの、シマリスくん、アライグマくん、クズリくん、スナドリネコさん、ぼのぼののお父さん、ショーねえちゃん。おなじみのキャラクターたちが総出演するこの絵本のあらすじはこうだ。

 ぼのぼのは、いつも楽しい遊びを考えて遊んでいるラッコの子ども。ぼのぼのが森の中の道を歩いているとき、友だちのシマリスくんは、どこにいるかな? いじめっ子のアライグマくんは、何をしているかな? あくびがでたとき、雨がふったとき、花が咲いたとき……
みんなはどこで、だれと、何をしているかな?

 本作は絵本であり、もともとの『ぼのぼの』同様に複雑な展開はない。彼らの生活を垣間見て、やわらかな森の時間を体感できる。ただ『ボクたちの森のこと』は、絵本の短いページのなかにいくつもの“要素”がちりばめられており、それらが収束するラストではちょっとしたカタルシスも感じられるはず。

ボクたちの森のこと P26

 久しぶりに発売された「ぼのぼの」ワールドが楽しめる絵本。元からのファンにも、新規のファンにもおすすめだが、とくに、あなたが子どもをもつ親であれば、ぜひ手に取ってほしい。きっと親子で何度でも楽しめる一冊になるだろう。

文=古林恭