紫式部『源氏物語 一帖 桐壺』あらすじ紹介。千年を超えて読み継がれる恋物語の幕開け! 継母への許されざる思い

文芸・カルチャー

更新日:2024/3/13

源氏物語』と聞いて、どんなことを思い浮かべますか。「教科書に出てきた大昔の話」「光源氏が主人公の物語というのは知っているけど内容は詳しくわからない」という人も多いのでは? そこで、54帖に亘る超長編小説である『源氏物語』を1話ごとに簡潔に紹介し、物語がどのような結末を迎えるのか、著者・紫式部が伝えたかったことは何なのか、わかりやすくお伝えします。

<第2回に続く>
源氏物語 一帖 桐壺

『源氏物語 一帖 桐壺』の作品解説

『源氏物語』とは千年以上前に紫式部という女流作家によって書かれた長編小説です。主人公・光源氏が誕生し、美少年から誰もが憧れる貴公子へと成長して、酸いも甘いも知るミドルエイジ、そして老年に至るまでが描かれています。作品の魅力は、なんといっても恋多き光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。

『源氏物語 桐壺』は、54帖から成るこの物語の第1章です。ここでは、主人公である光源氏の誕生とその幼少期が描かれます。後に光源氏が生涯に亘って思い焦がれることになる継母・藤壺との出会いも描かれており、絶世の美男子でありながら影を負う光源氏の人生が予見されているようでもあります。

『源氏物語 一帖 桐壺』の主な登場人物

光源氏:物語の主人公。美貌だけでなく学問や芸術の才能もある。「桐壺」の巻では誕生から元服(12歳)までが描かれる。

桐壺の更衣:光源氏の実の母。帝の寵愛を受けるが、他の妃から陰湿ないじめを受け病になり、源氏が3歳の時に亡くなる。

帝:源氏の父で桐壺帝とも呼ばれる。モデルは醍醐天皇ともいわれる。

藤壺:桐壺帝の妃で源氏の継母となる。源氏より5歳年上の美しい女性。

葵の上:源氏の正妻。左大臣の娘で良い家柄の美人であるがプライドも高い。

『源氏物語 一帖 桐壺』のあらすじ​​

 舞台は平安王朝、時の帝から一身に寵愛を受ける桐壺の更衣という美しい女性がいた。さほど身分が高くない彼女は、帝の妻や他の愛人から嫉妬を買い、非情な嫌がらせを受けていた。帝と更衣の間には、とても美しい男の子が生まれ、後に光源氏と呼ばれるこの子を、帝はとても可愛がった。源氏が帝の後継になるのではという懸念から妻たちの嫌がらせはエスカレートし、それと共に帝の更衣への愛も増していく。しかし、あまりに壮絶ないじめに耐えられず、病に伏し遂に更衣は死んでしまう。源氏が3歳のことであった。

 時は過ぎ、光源氏は恐ろしいほど美しく、学問や芸術にも秀でた少年となり、父である帝は相変わらず源氏を慈しんだ。帝は桐壺の更衣に驚くほど似た藤壺という女性を新たに妻として迎え入れ、深く愛した。そして、源氏は歳の近い継母・藤壺に次第に惹かれていく。

 12歳で元服した光源氏は、左大臣の娘・葵の上と結婚したが、プライドが高く歳上の彼女との結婚生活はあまりうまくいかない。亡き母・桐壺の更衣の部屋が与えられその実家を屋敷とした源氏は、母に似ているという藤壺に秘めた思いを募らせていくのだった。