魯迅『故郷』あらすじ紹介。幼少時代の友人に再会。しかし、格差の壁が友情との間に立ちはだかり…
公開日:2023/4/29
中学校の教科書にも採用されている、魯迅の代表作『故郷』。魯迅は中国の貧困や、現状を甘んじて受け入れる民衆の無知を描き、当時の人々に国民性の改革を訴え続けてきた作家でもあります。このような魯迅の姿勢は、現代においても再び注目を集めているため、作品が気になっている方も多いのではないでしょうか? 今回は、魯迅『故郷』のストーリーと内容をわかりやすく紹介します。
『故郷』の作品解説
『故郷』は、魯迅の代表作ともいえる短編小説のひとつで、旧態依然の身分制度が残る時代の中国の農村を舞台としています。主人公の生家の没落、故郷の様子などは、著者である魯迅自身の経験を基に描かれているのが特徴です。
主人公の「私」は、かつての友人と再会し、子どもの頃には気付かなかった「身分」や「階層」の違いを感じて、ショックを受けます。封建的な身分制度に慨嘆しながらも、未来に対する希望も込められている作品です。
『故郷』の主な登場人物
私:主人公。父親の死後、没落した生家を引き払うために20年ぶりに帰郷する。
閏土(ルントウ):「私」の家の雇われていた小作人
宏児(ホンル):「私」の甥
水生(シュイション):ルントウの息子
『故郷』のあらすじ
主人公の「私」は、裕福な家に生まれたが、父親の死後に没落し、一族が住んでいた家を引き渡すことに。家財道具などを売り払うため、20年ぶりに故郷を訪れることになった。
その一方で、かつての友人で憧れの存在でもあった閏土(ルントウ)との再会を楽しみにしていた。海辺に住み、鳥を捕まえる方法や、畑を荒らす動物を退治する話など、未知の世界を教えてくれるルントウに、少年時代の「私」は、すっかり魅了されていたのだ。
しかし、再会したルントウは少年時代の面影も薄く、顔には深いシワが刻まれ、生活も苦しい様子。さらに、ルントウから「旦那さま」と呼ばれたことで、ふたりの間には「身分の違い」という大きな壁があることを悟ってしまう。「私」の家は、村の地主であり、ルントウの父は、「私」の家に雇われる小作人という関係にあった。
少年時代の憧れを失い、出身階層の違いを否応無く突きつけられ、打ちひしがれる「私」であったが、その後、「私」の甥の宏児(ホンル)とルントウの息子・水生(シュイション)が出会ってすぐ仲良く遊び始め、再会の約束をしたことを知る。
幼いふたりのやりとりに、かつての「私」とルントウの関係を重ね、若い世代が将来「壁」を感じずに生きられるような世界になることを願うのだった。
<第69回に続く>