ウケる話のコツは「5W1H1D」? お笑いスキルからロジカルに学ぶ、今日から使えるトーク術

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公開日:2023/4/27

お笑い芸人に学ぶ ウケる!トーク術 昨日起こった出来事を面白く話す方法
お笑い芸人に学ぶ ウケる!トーク術 昨日起こった出来事を面白く話す方法』(田中イデア/立東舎)

 昨今は、トークスキルが役立つ場面が増えた。対面でのコミュニケーションはもちろん、映像や音声の配信など、誰もが一躍“時の人”になれるチャンスも多い。ただ、周囲の心をつかむトークスキルを学べる機会は、そう多くはない。

 書籍『お笑い芸人に学ぶ ウケる!トーク術 昨日起こった出来事を面白く話す方法』(田中イデア/立東舎)は、若手お笑い芸人の発掘や育成に取り組む放送作家でライターの田中イデア氏が、一般読者向けにトークスキルを指南する一冊だ。「話すのが苦手な自分を変えたい」「面白い話をして人気者になりたい」と考える人たちの背中を押す。

トークを邪魔する「緊張」克服のためのトレーニング

 相手へ正確に話を伝え、ウケたい。しかし、うまくできない……。そう考える人の一番の敵は「緊張」だ。緊張の裏には「面白く思われたい」「ウケなかったらどうしよう」といった不安もあり、これらの余計な気持ちを克服するためには慣れが必要になる。

 では、どんな対策を打つべきか。例えば、本書では「人の視線」のトレーニングを紹介している。

 方法はユニークで、まず、電車内で向かい側に座っている人たちに対して、ここで今から話をするんだと想像する。そこから、話すつもりで視線を左から右、そして中央、右から中央、左と繰り返し移すだけだ。

 これを実践すれば、周囲の人はあくまでも普通の人であり、受ける視線を自分の妄想で怖いと感じているだけだと気がつく。日頃、電車などでスマホを見ている時間を、わずかでもこのトレーニングに置き換えてみれば、自分を変えられるはずだ。

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お笑いの“お約束”はロジカル「フリとオチ」の役割

 相手にウケるためのトークの基本は「緊張の緩和」にある。本書で紹介されている、赤ちゃんに対する「いない、いない、ばぁ~」の事例は分かりやすい。「いない、いない」と手で顔を隠しているとき、赤ちゃんは不安から緊張を感じている。その後、「ばぁ~」を合図に「安心」という緩和が生まれ、赤ちゃんに笑いが起こるのだ。

 そして、実際のトークではフリとオチの構造をふまえておく必要もある。お笑い番組などでたびたび聞かれる言葉だが、フリには現在の状況や設定を紹介することで、トークにおける緊張を生み出す役割があるという。対して、オチではフリで説明した状況や設定を裏切るのがセオリーとなる。

 本書で取り上げる、熱湯風呂を前にした“お約束”のくだりは典型例だ。「この熱湯はかなり熱いから、押すなよ! 絶対に押すなよ!」はまさにフリで、「熱湯は熱いから、後ろから押されて入ると大変なことになるよ」と暗に伝えており、結果、「押す」ことで「裏切り」が生じて笑いが生まれている。

具体的に情景を描写しながら「5W1H1D」で伝える

 ネタそのものの面白さも大切だが、ネタをうまく加工できるかどうかがウケるかどうかの分かれ道だという。いわば、いかにうまくまとめるかに通じる話で、本書ではその型として「5W1H1D」を紹介している。

 よく聞くのは「5W1H」で、これは「いつ(When)」「どこで(Where)」「だれが(Who)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」の6つのことだ。さらに、結論として自分が「どうした(Do)」を加えたものが「5W1H1D」となる。

 著者によると話す場合はどの順番からでもよい。ただ、一般的には「いつ」「どこで 」「だれが」「何を」「どのように」「どうした」「なぜ」の流れが多いという。そして、各要素は具体的な表現がふさわしい。

 例えば、「いつ」を説明する際、学生時代の思い出ならば「学生のころ」よりも「中学2年生の夏休み」と。「何を」を説明する際、恋人とのトラブルで頬をビンタされた思い出ならば「頬っぺたをビンタされた」ではなく「浮気がバレて頬っぺたをビンタされた」といったように、相手が情景を浮かべられるような表現を心がけるのがよい。

 さて、本稿で紹介した内容はごく一部。この他にもトークスキル向上に役立つ具体的メソッドを数多く紹介している。究極は「ウケる」ためのトークが目的だが、相手を笑わせることはいたってロジカルだというのも、本書から得られる学びだ。

文=カネコシュウヘイ