ワンオペ育児でキャリアに諦め、“小1の壁”に不安がいっぱい…「40歳の壁」を乗り越えるためのヒント
更新日:2023/5/8
趣味や仕事、家庭生活を充実させて、人生を今よりもっと良くしたい。そう考えている人なら誰もが、思い通りにいかないもどかしさを感じることがあるはずだ。そして、人生の困難を示す言葉としてよく登場するのが、「壁」というワード。中でも、子育てをしながら働く人にとっては、妊娠・出産の壁、小1の壁など、自分の力ではどうにもならない理不尽な壁を前に、茫然としてしまった人もいるだろう。そんな壁のひとつである「40歳の壁」の存在と、それを乗り越えるためのヒントを伝えるのが、本書『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』(尾石晴/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。
著者は、外資系メーカー勤務中から「ワーママはる」として育児をしながら働く女性目線での発信をスタートし2020年4月に独立、現在は執筆や音声メディアでの発信、ヨガスタジオやスキンケアブランド運営も手がける尾石晴氏だ。著者は、第一線で働くためには転勤が前提の職場で、子育てを理由にキャリアが停滞、私生活に割ける時間の少なさにも悩み、40歳を前に退職を決意。その後、40歳からの人生を充実させる働き方を手にした著者が、自身の経験をベースに、40歳の壁の乗り越え方を綴った本だ。
特に子育てをしながら働く女性が直面するのが、40歳の壁だ。40歳前後は、子どもが小学校に進学する人が多い年代。子どものケアが、シッターなどで外注も可能な「お世話中心」から、特定の大人が目を配るべき「学業+心のフォロー」へ移行する。それまで仕事と育児をなんとか両立してきた人もこの壁にぶつかり、体力も低下する中、仕事と家庭の負担がのしかかり疲弊。ここ数年の仕事を振り返ると時短勤務でキャリアも停滞していて、自分の生き方を「このままでいいのだろうか」と悩み始める時期だと著者は言う。
そんな40歳の壁に立ち向かう方法のひとつとして、著者は「自分業」を提案する。自分業とは、やりがいを持って自律的に働くことができ、「お金」「(人との)つながり」「健康」という幸せな人生に必要な条件を満たせる仕事のこと。自分が好きで、やりたい仕事で収入を得られて、仕事の量や時間のコントロールも可能。定年がなく仕事を長く続けることができ、収入や健康面など、40歳以降に気になってくる問題も解決できる働き方だ。
本書は、そんな自分業の見つけ方から育て方、そして自身が自分業にシフトした経験から学んだことを解説。自分が趣味に使っているお金を経費にできる仕事があるか考えてみる、顧客の「変化」を起こす仕事が収入につながるなど、自分業を探すためのステップや仕事の組み立て方などが、身近な例とともに具体的に示されていてわかりやすい。会社員をしながら副業として自分業に従事するのもひとつの方法なので、独立志向がない人も含めて、幅広い読者の働き方の参考になる。
働き方の変更を考える人以外も学びを得られるのも、本書の特徴だ。たとえば、人が幸せを感じる土台である「お金」「つながり」「健康」という考え方は、自分の悩みや不調に気付き、対処するきっかけにつながる。人間関係も自分業や副業の選び方も、「自分が気持ちよく付き合える人」「周りにも質問して自分の強みを知る」など、「自分」を主語にして考えるとストレスが減る。家庭や子育てで自分を犠牲にしてきたと感じる人や、ワーママではなくても、自分に立ち返ることなくひたすら仕事にまい進してきたという人は、「自分」をベースにした助言の数々が、心に響くのではないだろうか。人生の折り返しにさしかかり、漠然としたモヤモヤを抱えているすべての人が、一歩を踏み出すきっかけを得られる本だ。
文=川辺美希