子どもの性教育は、3歳から⁉ 幼児期から家で始める性教育で自己肯定感を高め、子どもを守る
公開日:2023/5/13
「ママはなんでおちんちんついてないの?」と子どもに聞かれて、なんと答えたらいいのか戸惑ったという経験を持つ方も多いのではないでしょうか? 筆者(女性)も6歳と4歳(ともに男子)の親。子どもに立ちションの仕方を聞かれたり、お風呂に入る時にナプキンを見られて「血がついてる!!」とドン引きされたり……。これまで度々性教育について考えるきっかけはあったのですが、「何を教えたらいいの?」「そもそも親(しかも異性)から伝えるものなの…?」とわからないことだらけで放置してきました。そんな中発見したのが『おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方』(フクチマミ、村瀬幸浩:著/KADOKAWA)です。
マンガを描いたフクチマミさんをはじめ、この本に携わっていてかつ4~10歳のお子さんを持つ人々が日々子どもと接する中で生じた性教育への疑問や悩みに、性教育研究者の村瀬幸浩さんが答える形で展開されます。村瀬さんは、高校・大学での長い指導経験があり、本書では幼児期からの性教育の重要性や、具体的な声掛け、接し方を教えてくれます。現在親世代の我々にとっては、性教育とは「思春期くらいに学校で少し触れられるもの」というイメージの方が多いかもしれません。そのせいもあり、子どもに性の話をするのは少し気恥ずかしい気もしてしまいます。しかしだからこそ、お互いに恥ずかしくなる思春期よりも前の幼児期の方が話しやすい。そしてネットや友達の話から間違った知識を得てしまう前に正しい知識を持つことで、自分の性や体を肯定的に捉え、自己肯定感に繋がると本書は伝えてくれます。
性教育と言っても伝えるべきことはたくさんありますが、中でも幼児期の親にとって一番関心が高いのは、子どもが性犯罪に遭わないために教えるべきことではないでしょうか。性犯罪を回避するために、そして自分が加害者にならないためにも、まずは「口・胸・性器・おしり」はプライベートパーツといって体の内部につながり、食べたり排泄したり、妊娠・出産・性愛といった生命活動に直接関わる、どんなに親しい間柄でも決して同意なく触ってはいけない場所だと伝えることが重要。
そして万が一被害に遭いそうな時、遭ってしまった時の対策として伝えておくべきなのが「NO・GO・TELL」。自分がされて嫌だと感じたらはっきり拒否すること、人の多い方へ逃げること、もし「内緒だよ」と言われても信頼できる大人に話すこと、の3つだそうです。
まったく知らない人よりも、知っている人や見かけたことのある人からの被害が多いと言われる性犯罪を回避するために必要な3つの要素。とくに「NO」は「これくらいのことで嫌と言ったら相手を傷つけてしまうのでは」と大人でも陥りやすい思考の対策としても有効。「自分が嫌だと思ったら嫌だと言っていいんだ」と伝えることは、性教育以外の面でも重要です。
そのほか、性交・出産について聞かれた場合の答え方の例や、「子どもがAVやアダルトサイトを見ていたことに気が付いたらどうしたらいいか?」といった質問への回答など、すぐに実践できそうな具体的な内容も多数。LGBTを含む多様な性のあり方の解説は、親側である私でも勉強になることばかりでした。
子どもがもう少し大きくなった時、もしも自分からすべてを伝えるのが難しいと感じたら、この本を渡して直接読んでもらうのもいいかも。そう思えるほど充実の一冊。
文=原智香