天海祐希×松下洸平のドラマ原作レビュー!暴力団同士の賭け将棋に加担したり、自分を餌にしてターゲットをおびき寄せたりしながらも必ず依頼を成功させる女探偵の話

文芸・カルチャー

更新日:2023/5/11

合理的にあり得ない 上水流涼子の解明
合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(柚月裕子/講談社)

 月曜日22時、カンテレ・フジテレビ系で放送中のドラマ『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』(2023年4月17日スタート、全10回)をご存じでしょうか? 同じくドラマ『離婚弁護士』や『BOSS』などでハンサムウーマンを演じてきた天海祐希が主演。とある出来事で弁護士資格をはく奪された探偵・上水流涼子を演じます。そんな涼子とバディを組むのが、IQ140の貴山伸彦(松下洸平)。型破りの展開と二人の絶妙なやりとりが癖になるドラマです。

 そんな本作の原作となるのが『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社)。『孤狼の血』『盤上の向日葵』など重厚なミステリーで知られる柚月裕子さんの小説ですが、ご本人も「この作品は自分が書いた小説のなかで、一番、楽しさを意識して書いたものです」と語るように、それらの作品とは一味違う作風。一章ごとに事件が解決されるスタイルで、エンターテインメント色の強い作品になっています。

 弁護士資格をはく奪され、探偵事務所を立ち上げた涼子。彼女のもとを訪れるのは、財産を違法すれすれの手段で奪われ自殺した夫の仇を討ちたいなど、正当な方法では解決できない悩みを抱えた依頼人たち。対して涼子は、「殺しと傷害、相手を肉体的に傷つけたり命を奪うことだけは、絶対にしない」というのが唯一のルール。彼らの依頼を引き受けると、高額な依頼料とその資金を存分に使った型破りな方法で解決に導きます。時には自らの端麗な容姿を餌にターゲットをおびき寄せたり、暴力団同士の賭け将棋に加担したりと危ない橋を渡りながらも、必ず依頼を成功させる涼子。

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 その成功に欠かせないのが、いつも無表情な東大卒・貴山です。涼子が「茶の淹れ方、料理の腕、仕事の手際、どれをとっても一級品」と称賛する貴山はどんな専門知識でもすぐに吸収し、涼子の無茶振りに応えます。またドラマでも見どころとなっている涼子と貴山の絶妙なやりとりは、小説でも健在。涼子の奔放な絡みをあっさりあしらうなど、二人の掛け合いは、お互いに信頼し合うバディならではの空気感が魅力。バディもの好きにはたまりません。

 本書の後半に進むにつれ、涼子が弁護士資格をはく奪されることとなった事件も明るみに。なぜ涼子は弁護士資格を失ったのか。涼子と貴山の出会いとは――。スピード感のある展開に、どんどん夢中になること間違いなしです。続編も発売中なので、ドラマを観てから読むもよし、観る前に読むもよし。気軽に読み進められる一冊、ぜひ手に取ってみてください。

文=原智香