「魔法が使えるようになるには?」「サンタはいない?」図書館に寄せられた子どもたちの質問に司書が回答! 忘れていたあの頃の気持ちをもう一度
公開日:2023/5/13
様々なジャンルの本を借りることができる図書館。利用者の私たちにとって、目当ての本が見つからないなどの疑問に応えてくれる司書の方々は心強い味方になる。そんな彼らのもとには、子どもたちからの質問が届くこともある。
書籍『図書館にまいこんだ こどもの大質問』(こどもの大質問編集部/青春出版社)は、実際にあった子どもたちと司書のふれあいを多数紹介する一冊だ。「こんな質問、こんな回答があったのか!」と驚くエピソードの数々は、心温まるものばかり。その中から、3つの事例を取り上げてみたい。
魔法を使いたい。司書のアドバイスを受けた少年のその後は?
母親と一緒だった6歳の男の子は、図書館のカウンターで「魔法の本ありますか?」と尋ねた。それは彼が「魔法を使えるようになりたい」と願っていたからだ。
司書は、魔法使いになれるなら「ちょっと難しい本でもがんばって読む」と意気込む男の子のため、図書館の「民間信仰.迷信[俗信]」「伝説.民話[昔話]」コーナーへ親子を案内。「魔法を使うには修行が必要」「魔法の使い方」といった内容を扱う本を、3冊紹介した。
そのうち2冊を借りていった男の子は「お母さんといっしょに修行をして、魔法が使えるようになったら見せに来るね」と、司書へ感謝。後日、「おうちでほうきを作った。2秒くらい飛べた」と報告しに来たそうで、何とも微笑ましいかぎりだ。
父親の発言に号泣。「サンタクロースはいない」と知った少年
大人が困る質問の代表格「サンタクロースはいないって、本当?」という疑問を、司書へ尋ねてくる子もいる。ただ、本書で取り上げる男の子は、そう尋ねてきた事情が少しかわいそうだった。
12月某日、男の子の父親はふと「サンタクロースはいない」と発言した。それを聞いて男の子は「知りたくなかったー!」と号泣。落ち込んだ彼をみかねた母親がなんとかしてやりたいと、一緒に図書館へやって来た。
司書がすすめたのは、かつて「サンタさんいるいない論争」に「結論」を出したとして話題になったベストセラー絵本『ひゃくおくまんのサンタクロース』(もたいひろこ:著、マリカ・マイヤラ:イラスト/アノニマ・スタジオ)だった。
ただ、当日は「貸出中」であったため、後日、母と子は改めてその本を借りることに。男の子は答えに納得して、父親と母親も無事にクリスマスのプレゼントを渡せたという。
レポートに悩む中学生。司書が助言した参考文献の探し方
図書館には、中学生からの質問も届く。本書で紹介されるのは「食品添加物」をテーマにした自由研究のレポートを作るため、図書館を訪れた生徒だ。
この生徒は「先生から、インターネットだけで調べるのはダメだと言われた。自分はすでに“添加物肯定”で意見が固まったので、賛成派の本を紹介してほしい」と司書へと相談した。ただ、それでは「参考文献欄に書名を書くためだけに本を探している」ことになりかねない。
そこで司書は、生徒に「館内にある食品添加物関連の本」を紹介。レポート用にすでに調べた周辺知識に誤りがないかを本でも確認した方がいいと助言し、さらに他者の見解を参考にする場合はひとつの見方だけでなく、異なる主張も必ず見ておく必要がある、と付け加えた。
正直、すでにレポートの「まとめ」にかかっていた生徒からすれば、ひょっとするとアドバイスはおせっかいだったかもしれない。ただ、「大切なことだからこの機に資料と向き合う姿勢を養ってほしいなぁ」という司書の思いには、どこか「本のプロ」としての矜持も感じられるのだ。
さて、タイトルに「こどもの大質問」と付いた本書では、他にも様々な疑問とそれに対する司書の返答を収録している。大人になると忘れてしまう、童心と素朴な興味。読んでみると、そんな懐かしい感覚を取り戻せるはずだ。
文=カネコシュウヘイ