広い畑がなくてもできる農体験! シェアファームやベランダ、屋上でも叶う「農(みのり)」のある暮らし
公開日:2023/5/23
リモートワークの普及や働き方改革で、時間の使い方、住む場所に対する考え方が変わってきたという話をよく耳にする。そんなタイミングでぜひ手に取ってほしいのが、『ちいさな「農」のある暮らし』(多田千里:編集/主婦の友社)という書籍だ。
ビジュアルたっぷりの本書が紹介しているのは、家庭菜園や庭づくり、初心者でも挑戦できるプランター栽培など、土に触れ、野菜や植物を育て、生活に「農(みのり)」を取り入れるためのアイディア。InstagramやYouTubeでみのりのある暮らしを発信する人たちへのインタビューは、見ているだけでも参考になるきれいな写真が満載だ。彼らが畑仕事をはじめたきっかけや、続けていく中でのよろこび、ちょっとした工夫、参考になる情報源、失敗談とそれを乗り越えたときの心境なども語られており、土とともに生きる暮らしへの憧れがふくらむ。
「ちいさな農のある暮らし」は、広い畑がなくてもだいじょうぶ。シェアファームでも、ベランダでも、自宅の屋上(!)でも、土に触れ、みのりを得る生活ができる。本書では、さまざまな実践例が写真とインタビューで紹介されており、自分が実際に挑戦するイメージも描きやすい。育てたハーブをちょっと摘み、料理に添えるなんていう生活も夢ではないのだ。
「いきなり本格的な畑はちょっと……」という人は、気軽に参加可能な“農体験”に行ってみてはどうだろう?
シェアファームに通ってハーブを育て、そのハーブで料理やせっけんをつくるデザイナーのカナヤミユキさんはこう語る。「自給するってすごく心が安定するんです。たとえばせっけんが何からつくられているかなんて今まで何も知らずにいたけど、自分でつくるようになったら、市販のせっけんの成分表もわかるようになりました。何が正しいとか、正しくないとか、いろんな情報が錯綜していて、なんとなく追求しないまま、曖昧に生活している感じがあったけど、自分の生活を支えているものが“何か”がわかると、そこにあるから使うんじゃなくて、ちゃんと選ばなきゃとなる」。簡単で便利、時短が尊ばれる現代の生活に慣れていると、ついつい忘れてしまいがちなことがある。それを、しみじみと思い出させてくれる言葉だ。
農作業上級者も、みのりを楽しむ人たちの具体的な畑づくりや庭づくり、道具の紹介、日々の食卓で活躍するレシピなどから、学ぶことは多いだろう。本格的に農業をやってみたいという人は、園芸家から農家に転身し、シェアファームの管理・運営や里山の再生を手がける井上隆太郎さんのインタビューが、おおいに参考になるはずだ。
なにかと忙しない毎日の中でも、読んで、見て、実践して、「ちいさな農(みのり)」とおおきな満足を味わえる本書。畑仕事初心者から上級者まで、必携の一冊となりそうだ。
文=三田ゆき