イプセン『人形の家』あらすじ紹介。「私は人形なんかじゃない!」夫の愛に疑問を抱いた妻は…

文芸・カルチャー

更新日:2023/10/11

 イプセンを世界的な劇作家として押し上げた代表作『人形の家』。各国の新演劇やフェミニズム運動など多方面に影響を与えた作品ともされており、気になっている方も多いのではないでしょうか? 今回は『人形の家』について、結末までのストーリーをわかりやすく解説します。

人形の家

『人形の家』の作品解説

 1879年に上演され、イプセンの名を世に知らしめた代表作です。主人公・ノラは、コペンハーゲンの女性作家ラウラ・キエラーがモデルとなっており、センセーショナルな結末は賛否両論を巻き起こしたものの、新時代の女性像を世に示し、後の女性解放運動にも影響を与えたとされています。

『人形の家』の主な登場人物

ノラ:弁護士の妻で日々明るく振る舞っているが、ある重大な秘密を抱えている。

ヘルメル:ノラの夫で弁護士。倹約家であり一見すると愛妻家。

クロクスタ:ヘルメルとは旧知の仲で部下になる予定だが、実は疎まれている。

『人形の家』のあらすじ​​

 弁護士から銀行頭取に出世するヘルメルと、その妻であるノラ。ヘルメルはノラを小鳥のように愛で、ノラもつとめて可愛い妻であろうと明るく振る舞っていた。公私ともに充実して見える夫婦だが、ノラは、ある重大な秘密を抱えていた。

 それはヘルメルが病に倒れていた時、内緒で彼の知人・クロクスタから多額の借金をしていたことである。その際、借用証書のサインを偽造する違法行為も犯してしまう。

 ある日、ヘルメルの部下となる予定のクロクスタがノラのもとを訪ねる。ヘルメルの頭取就任後に解雇される予定のクロクスタは、偽造サインの証拠を基に、解雇を取り消さなければ秘密を暴露するとノラを脅迫する。脅されたノラは、ヘルメルに解雇を取り消すよう頼むが、事情を知らないヘルメルは話を聞き入れず、クロクスタは解雇される。宣言どおり秘密を暴露する手紙が送りつけられるとヘルメルは激怒し、ノラを散々に罵倒。しかしその時、改心したクロクスタから借用証書が返送されてくると、先ほどまでの態度を一変させ、これまでどおり甘い言葉を発するヘルメル。

 夫の豹変ぶりを見たノラは気付いてしまう。「自分は愛されていたのではなく、ただ人形扱いされていただけであり、ひとりの人間として認められていないのだ」。妻や母親ではなく、誰かの人形でもなく、ひとりの人間として生きることを決めたノラは、ヘルメルの制止を振り切って家を飛び出した。

<第72回に続く>