「この結婚は上辺のものに過ぎない」と突き放されても――愛人の子として虐げられてきた王女が、獣人の国の冷徹な王太子に嫁ぐ、溺愛シンデレラストーリー!
公開日:2023/6/23
恵まれない境遇から成り上がり、幸せを勝ち取るシンデレラストーリー。昔から愛され続けているジャンルだが、近年、女性向けのWeb小説を中心に一層盛り上がりを見せており、今最も人気のあるジャンルのひとつとなっている。虐げられながらも真っ直ぐな心を持ち、ひたむきに生きてきたヒロインが報われ、虐めた側が落ちぶれるいわゆる「ざまぁ」展開は、現実で理不尽と戦う読者をスカッとさせてくれる。
『虐げられた花嫁は冷徹竜王様に溺愛される』(ナナキハル:著、もり:原作/スターツ出版)は、そんな「虐げられ」×「溺愛」を描く異世界シンデレラストーリー。小説投稿サイト「ベリーズカフェ」で連載されていた小説が原作で、本稿で紹介するのはそのコミカライズ版だ。元々電子書籍版が先行して販売されていたが、2023年6月22日、待望の単行本版1巻・2巻が同時刊行された。また、電子マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」でもデイリー1位(2022年7月23日付、マンガ恋愛ランキング1位)を獲得し、注目を集めている。
本作品の主人公は、フロメシア王国国王の妾の子である第二王女・レイナ。幼くして母親を亡くし、王宮に引き取られてからは義姉・ルルベラにひどく虐げられ、周囲からは「お気の毒なレイナ様」と揶揄されていた。そんな中、ルルベラに、野蛮とされている獣人の国の王太子との婚姻の話が持ちかけられる。とある事情から拒むことを許されないその婚姻を嫌がったルルベラは、代わりにレイナに嫁ぐよう指示。こうしてレイナは、冷徹竜王と恐れられる獣人の国の王太子・カインのもとへと嫁ぐことになった。
恐ろしい姿をしていると噂されていた王太子だったが、獣人の国へ着いて出迎えてくれた婚約者は、空のような青い髪に静かに燃える金色の瞳をした、美しい男性。
しっぽもなければ獣耳もなく、何の獣人かは不明だが、カインはレイナを快く迎え入れてくれた――ように思えた。しかし結婚式当日の夜、カインに「この結婚は上辺のものに過ぎない」「世情が安定すれば離縁するつもりだ」「気の毒なことだ」と言われてしまい――。
ここにいる間は好きなように過ごしてくれ、と突き放されてから1カ月。レイナはカインとまともに顔を合わせることすらなく、周囲からは笑われ、カインの獣人にとって唯一無二の存在、「番」となる予定だったカミーラに恨まれ、居場所のない中で過ごしていた。でも実は、カインがレイナを突き放したのは、獣人の「番」への執着心が彼女を縛りつけてしまうかもしれない、というカインなりの気遣いで――!?
レイナのことを大切に思っているからこそ、彼女のことが気になりすぎて、苦しめたくなくて空回りしてしまうカイン。しかしさまざまな障害や思いを乗り越えながら、2人は少しずつ誤解を解き、距離を縮めていく。この思いやりゆえのすれ違い、カインの不器用さがじれったく、それでいてドキドキさせられる。また、居場所がない中でも気丈に振る舞い、前向きに明るく生きようとするレイナの姿勢にも好感が持て、見ているこちらまで希望と元気をもらえたような気がした。
1巻終盤では、ようやく互いの思いを確認し合えた2人に、さらなる障害が立ちはだかる。ここからまた一波乱起こりそうな予感だ。レイナとカインの仲はどうなっていくのか、人間と獣人の間にある溝は埋まるのか、レイナの義母・義姉の動向は――⁉ この気になる展開を、ぜひとも単行本で確認してほしい。
文=月乃雫