『ピーター・パン』あらすじ紹介。子どもたちだけの秘密の世界。大冒険のその先、永遠の少年の行く末とは?

文芸・カルチャー

公開日:2023/6/28

 シンプルな冒険ストーリーが長く愛され、ディズニー映画でも非常に有名な『ピーター・パン』ですが、原作が100年以上も昔の作品であること、多くの改変点があることをご存じでしたか? そこで今回はジェームス・バリー『ピーター・パン』のあらすじをわかりやすくお伝えします。かつて子どもだった大人にこそ、読んでほしい作品です。ぜひ一度触れてみてください。

<第7回に続く>
ピーター・パン

『ピーター・パン』の作品解説

『ピーター・パン』の原作は、イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの1904年の戯曲、および1911年の小説『ピーター・パンとウェンディ』です。

 原作のネバーランドは、ディズニー版よりもシビアな世界なのが大きな特徴で、住民たちは命を落とすこともままあります。また子どもと大人の対立も、全編を通してより深く描かれています。

『ピーター・パン』の主な登場人物

ピーター・パン:公園で乳母とはぐれてから歳を取らなくなった、永遠に大人になりたくない少年。奔放で忘れっぽく、少年ゆえの残酷さも。

ティンカー・ベル:ピーターの相棒の妖精。とても嫉妬深い。

フック:言葉巧みで、気品漂う碧眼の痩せこけた海賊。鈎フックは右手首になっている。

ウェンディ:夢見がちなダーリング家の長女。

ジョンとマイケル:ウェンディの弟たち。

ロストボーイたち:ピーターに付き従う迷子たち。

メアリー:一家の母。おとぎ話の姿に瓜二つなピーターを目撃する。

ジョージ:一家の父。とある夜、子どもたちの失踪の原因を作ってしまう。

ナナ:優秀な乳母犬。本作では置いてけぼり。

『ピーター・パン』のあらすじ​​

 おとぎ話に夢中なウェンディの話す冒険譚を、窓の外から聴くのが好きだったピーター。ある日、ナナに噛みちぎられた影を取り返すため家に忍び込みますが、影をくっつけられず泣いているところをウェンディに見つかってしまいます。

 影を縫い付けてもらったピーターは、ウェンディに迷子たちのお母さんになってほしいと頼みます。おとぎ話の世界に心動かされたウェンディは、悩んだ末、弟たちとネバーランドへ。

 子どもだけの家、インディアンや海賊たちとの戦い。そんなネバーランドでの大冒険の間、ウェンディたちの母のメアリーは失踪した子どもたちを夢に見て泣き明かし、父ジョージは責任を感じてナナの犬小屋で暮らしていました。

 そして帰宅の日、ピーターは家へ先回りして窓の鍵をかけ、メアリーに勝利宣言をしますが、メアリーの大粒の涙に母の愛情を感じたピーターは罪悪感に苛まれ、窓を開け放って捨て台詞を残し去っていきました。

 無事に帰宅したウェンディに、メアリーは毎年春の1週間だけはネバーランドへ大掃除に行く許可を与えます。しかし約束を忘れがちなピーターは、2年後にはもう現れませんでした。

 時が経ち、結婚して娘・ジェーンを産んだウェンディの前に現れたピーターは、勝手に大人になったウェンディに怯え、怒り、泣きます。その泣き声で目を覚ましたジェーンは、おとぎ話のネバーランドに行きたいと言い、ウェンディはそれを許しました。さらに時は経ち、大人になったジェーンは娘のマーガレットを産みます。春が来ると、ピーターはマーガレットを誘いに現れるのでした。

『ピーター・パン』の教訓・感想​​

 母親の愛を知らないピーターがメアリーの涙を見た時のシーンは胸が熱くなるものがあります。大人になって読み返すと、ネバーランドでの大冒険に心躍らせた子どもの時とはまた違った印象を受けるかもしれません。