命の輝きに満ちた、ラッタ、チモ、アルノーたちの物語『あまがえるの たんじょう』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/6/22

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年5月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

おたまじゃくしが思いきって水から顔を出し、目に飛びこんできたのは初めて見る景色。力いっぱい息を吸いこみ……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するは、『あまがえるの たんじょう』。『あまがえるのかくれんぼ』『あまがえるのぼうけん』に続く人気シリーズの最終章。いったいどんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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命の輝きに満ちた、ラッタ、チモ、アルノーたちの物語『あまがえるの たんじょう』

あまがえるの たんじょう

作:たての ひろし絵:かわしまはるこ

みどころ

「ぎゅう ぎゅう……」
「かららら かららら……」
「きゃっ きゃっ きゃっ きゃっ」

夜の水辺では、かえるたちの大合唱。のどをふくらませて鳴いているのはあまがえるです。あまがえるは、水の中でたまごを産みます。ぷかぷかと漂っていたたまごは水草にくっつき、やがてたくさんの小さなおたまじゃくしがかえります。

水の中でなんでもかんでも食べるおたまじゃくし。愛らしい姿で、あちらこちらを元気に泳ぎまわります。ところが突然、おたまじゃくしは何かに襲われます。みずかまきりです。水の中には、おたまじゃくしを食べる生きものがたくさんいるのです。たくさんの仲間がいなくなりました。けれど、生き残ったおたまじゃくしは、どんどん大きくなり、少しずつその姿を変えていきます。やがて……。

暗く静かに見える夜の水辺の景色ですが、実際にはかえるたちの声で大賑わい。その姿もそれぞれ個性的です。

水の中でぷかぷかと浮かぶたまごからかえったのは、小さなおたまじゃくしたち。彼らには、これから大変な試練が待ち受けているのです。

小学館児童出版文化賞受賞作家・舘野鴻さんと、生物画家・かわしまはるこさんが手がける『あまがえるのかくれんぼ』『あまがえるのぼうけん』に続く、「3びきのあまがえる」シリーズ三部作の最後の作品は、ラッタ、チモ、アルノーたちの誕生と出会いまでの物語。約10年あまがえるを飼育し、水槽での観察を続けられてきたというかわしまさんの描く「水の中」でのドラマは、臨場感たっぷり。厳しい環境の中で、しっかりと生き抜くおたまじゃくしの姿は普段なかなか見られないもの。そして、彼らが初めて目にする外の世界の瑞々しさといったら!

「アマガエルの大気の世界への旅立ちは、私たちがお母さんから産まれてくるその時と重なる」のだと、館野さんは語ります。

自然をしっかりと観察すれば、その中で悩み、遊び、学び、力いっぱい今を生きる生きものたちの姿が見えてくる。そんな貴重な体験ができる科学ファンタジー絵本シリーズ。命の輝きに満ちた、ラッタ、チモ、アルノーたちの物語を堪能してください。

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編集長のおすすめポイントは……

描写が詳細になればなるほど

澄んだ水の中で繰り広げられるのは、生きものたちの緊張感あふれる命を懸けたやりとり。どこまでもリアルに描かれるおたまじゃくしたちの生態。けれど不思議なことに、その描写が詳細になればなるほど、彼らが愛おしく見えてくるのです。体つきが変わっていく様子も、手足を使って奔放に動き回る姿も、仲間たちと遊ぶ表情まで。それこそ、かわしまさんの画家としての魅力そのものであり、このシリーズに惹きつけられる理由なのでしょうね。

「3びきのあまがえる」シリーズ

あまがえるのかくれんぼ

作:たての ひろし絵:かわしまはるこ

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あまがえるのぼうけん

作:たての ひろし絵:かわしまはるこ

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磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。