『ラプンツェル』あらすじ紹介。箱入りならぬ“塔入り”のお姫さまは、幸せになれるのか?
公開日:2023/6/27
『塔の上のラプンツェル』として映画化もされ、今やディズニープリンセスも広く認知されているラプンツェル。映画では生まれながらのお姫さまでしたが、実は原作ではそうではありませんでした。今回はグリム童話『ラプンツェル』のあらすじをわかりやすく紹介します。気になった方は、ぜひ原作が収録されている童話集もお手に取ってみてください。
<第6回に続く>
『ラプンツェル』の作品解説
『ラプンツェル』は、19世紀のドイツでグリム兄弟によって執筆された『グリム童話集』の中の一作品です。初版ではあまり子ども向けでない性的な要素を含んでいましたが、版が進み改訂されるにつれ直接的な表現は排除され、よりマイルドに置き換えられていきました。
『ラプンツェル』の主な登場人物
ラプンツェル:長く美しい金髪を持つ美しい乙女。
魔女:花と野菜が一面に広がる庭を持つ魔女。おそろしい力を持っている。
農夫:魔女の庭の裏に住んでいる男性。
農夫の妻:妊娠中、魔女の庭に生えたノヂシャ(ラプンツェル)という野菜に魅了される。
王子:若き美男子。
『ラプンツェル』のあらすじ
むかしむかし、子どもが欲しいと願っていた夫婦がいました。ようやく願いが叶い、子どもを授かった農夫の夫妻。身重の妻がある日、窓から魔女の庭を眺めていると、ふと青々としたラプンツェル(葉野菜)が目に入り、食べたくて仕方なくなります。食事も喉を通らない彼女は日に日に痩せ細り、ついには病気に。見かねた夫が盗んできたラプンツェルをサラダにして食べた妻でしたが、次はもっと食べたいとねだります。再び畑に忍び込んだ農夫でしたが、魔女に見つかってしまいます。事情を話し、魔女は産まれる赤子を渡せば好きなだけ摘んでいいと約束しました。
魔女にさらわれた女の子はラプンツェルと名付けられ、美しく育ちました。彼女は12歳になると森の中にある塔へ幽閉されます。その塔には扉やはしごはなく、魔女が「お前の髪を下げておくれ」と呼びかけると、ラプンツェルは長く美しい金色の髪をはしご代わりにし、魔女を登らせたり、降ろしたりするのでした。
ある時、偶然通りかかった王子が、塔から聞こえるラプンツェルの歌に惹かれ通いつめるようになります。魔女の真似をして塔へ入り込み、彼女に告白します。初めて会う男性に驚くラプンツェルでしたが、やがて夜ごと会うようになります。
しかし、ラプンツェルの言動(初版では妊娠したお腹)から魔女に発覚し、怒り狂った魔女は彼女の髪を切り落として砂漠のど真ん中に放り出し、窓にくくりつけた髪を登ってきた王子をあざ笑います。王子は悲しみのあまり身を投げ、茨に両目を突かれ盲目となってしまいました。
数年間さまよっていた王子は、双子の母となっていたラプンツェルと砂漠で巡り会います。ラプンツェルの涙が王子の目に落ちると、彼はたちまち視力を取り戻しました。ふたりは国に戻り、幸福に暮らしました。魔女はその後どうなったでしょうか? 誰も知る人はいません。
『ラプンツェル』の教訓・感想
畑の野菜の代わりに、生まれてくる子どもを要求する魔女ですが、塔に閉じ込めて大切に育てていたラプンツェルに愛情は伝わらず「この人の方がよっぽどかわいがってくれそう」と、王子に奪われます。子どものためによかれと思っていることも、子どもの気持ちを考えなければ、空回りになってしまうかもしれません。