じめじめした季節、食中毒になりたくない! イケメン食中毒菌擬人化マンガ「ドクメン8」で予防法を学ぶ

暮らし

公開日:2023/6/29

マンガで学ぶ食中毒対策 STOP! 食中毒菌 ドクメン8
マンガで学ぶ食中毒対策 STOP! 食中毒菌 ドクメン8』(藤野リョウ/KADOKAWA)

 食中毒が心配な季節がやってきた。そんな今の時期の読書にぴったりなのが、食中毒菌をイケメンに擬人化したマンガ『マンガで学ぶ食中毒対策 STOP! 食中毒菌 ドクメン8』(藤野リョウ/KADOKAWA)だ。

 東京で一人暮らしを始めた24歳の珠子(たまこ)のもとに、8人のドクメンたちが次々にあらわれる。珠子とキャラの濃いドクメンたちが繰り広げるドタバタ劇には、食中毒予防の知識がふんだんに描かれる。マンガ本編のほか、最新情報満載の「食中毒コラム」も掲載されている本書は、笑いながら食中毒について実用的に学べる作品だ。本作が初の著書となる藤野リョウさんにお話をうかがった。

(取材・文=雪代すみれ)

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東京で一人暮らしを始めた24歳の珠子(たまこ)のもとに、8人のドクメンたちが次々にあらわれる
笑いながら食中毒について実用的に学べる作品

「食中毒菌の擬人化」はおもしろかったです(笑)

――「ドクメン8」、とても楽しく読みました。アイセイ薬局が発行する健康情報誌『ヘルス・グラフィックマガジン』の食中毒特集号に掲載されていた記事が原案とのことですが、どういった経緯で作品を描かれたのでしょうか?

藤野リョウ(以下、藤野):普段はマンガのアシスタントやイラストの仕事をしていて、担当編集の波多野さんとは別のお仕事でご一緒する機会がありました。波多野さんがドクメン8のマンガ化を企画し、マンガを描ける人を探しているとのことで、声をかけていただいたというのが始まりです。

――初めてドクメン8を見たときにどう思いましたか?

藤野:食中毒菌が擬人化されているのはおもしろかったです(笑)。記事の段階で一枚絵と決め台詞が描かれていて、キャラクター像はできあがっていました。なので、マンガ化したときに本来のドクメン8の魅力を損なわないよう、いかにストーリー展開を行うかは熟考を重ねました。

本来のドクメン8の魅力を損なわないよう、いかにストーリー展開を行うかは熟考を重ねました

――作品づくりでどんなことが楽しかったですか?

藤野:マンガの土台となるネーム作業に入る前に、原案の『ヘルス・グラフィックマガジン』の記事の企画・編集担当者でもあり、本書の「食中毒コラム」の執筆も担当されたメディカルライターの北島直子さんが、それぞれの食中毒菌の弱点や対処法などの知識をまとめて解説したものを送ってくださって、それを読むのが楽しかったですね。キャラクター像が鮮明になりましたし、なによりとても勉強になりました。安達佑佳さんによる原案イラストのドクメン8は、一枚絵のかっこよさが前面に出ていたのですが、マンガを描くにあたって各食中毒菌の特性を知ることでキャラクターの内面を掴めました。

 原案があるマンガの仕事も初めてだったのですが、ゼロからキャラクターやストーリー、世界観を創るのとは異なり、ベースのキャラクター像があるなかで、想像を膨らませて創りあげていくプロセスも新鮮で楽しかったです。

推しのドクメンは「ノロウイルス」

――8人のドクメンの個性がぜんぜん違うのには、そんな舞台裏があったのですね。逆に大変だったことはありますか?

藤野:メディカルライターの北島さんの解説のおかげで食中毒菌の特性を頭に入れたうえでネーム制作に入ることができたのですが、いざマンガのネームを完成させてチェックしていただくと、監修の浦上弘先生と北島さんから「読者の方に誤解を与えるので、この表現は変えたほうがいいと思います」とアドバイスをいただくこともあって、読み物としてのおもしろさと、正確な情報のバランス調整が難しかったです。

 また、サルモネラとノロウイルスなど、いくつかのドクメンは、マンガにするにあたってキャラクターデザインを元のイラストから変更したのですが、キャラクター原案の安達さんにもアドバイスをいただきながら、魅力あるキャラクター像を練りました。

 それから、実際に食中毒で苦しんでいる方がいらっしゃるので、あまり茶化しすぎないことも意識しました。とはいえ、怖い情報だけを並べても読むのが大変になってしまうので、おもしろく読めて役に立つ、というバランス感覚を大事にしました。

――個性派のイケメンぞろいですが、藤野さんの推しドクメンはいますか?

藤野:推しはノロウイルスですね(笑)。ドクメン8は基本的にナルシスト気質ですが、中でもノロウイルスは飛びぬけていて、キャラクターのセリフを考えていくのがとても楽しかったです(笑)。

推しはノロウイルスですね

 もう一人、ドクメン8の中で重要な存在だと思うのが黄色ブドウ球菌です。他のドクメンは押しが強いですが、黄色ブドウ球菌は傷つきやすく優しさが見えるキャラクターでして。「消えてしまうのがかわいそうに見えてくる」という感想もいただきました。食中毒菌にも色々なタイプがいることを黄色ブドウ球菌を通じて表現できたと思います。

食中毒菌にも色々なタイプがいることを黄色ブドウ球菌を通じて表現できたと思います

食中毒の具体的な知識を得たことで、“なんとなく怖い”がなくなった

――本作を描いたことで食中毒への印象は変わりましたか?

藤野:そうですね。今まで食中毒の経験がなかったので、「豚肉や鶏肉の生食は良くない」「常温で放置したら腐る」など、漠然としたイメージしか持っていなかったのですが、作品制作を通じて「何度以上で熱を通せばいい」とか「生野菜と肉とでまな板を分ける」とか具体的な気をつけ方がわかったので、“なんとなく怖い”という感覚がなくなりました。

――実生活に取り入れた習慣はありますか?

藤野:カレーを作ったら鍋ごと常温放置していたのですが、ウェルシュ菌のことを知ったので、粗熱をとったらすぐ冷蔵庫にしまうようになりました(笑)。

実生活に取り入れた習慣はありますか?

――食中毒をふせぐ正しい習慣が身につきますね(笑)。最後に読者へのメッセージをお願いいたします。

藤野:食中毒のニュースを見ても、なかなか原因や予防の知識を得る機会がなく「怖いけれど、どう対応したらいいかわからない」と思ってる方は多いのではないでしょうか。本作は読んでいるうちに、自然と食中毒菌の弱点や、どういう対策をすればいいかが頭に入ってくるので、普段あまり触れることのない知識を取り入れるきっかけになると思います。

普段あまり触れることのない知識を取り入れるきっかけになると思います

 主人公の珠子が、一癖も二癖もあるドクメンたちに翻弄されながらも対抗していく、というコミカルなキャラクター同士のかけあいは、読んでくださった方から、小学生の子どもも楽しく読めたとのうれしい報告をいただいたりしています(笑)。おもしろくてためになる作品に仕上がりましたので、ぜひお手に取って、食中毒予防に役立てていただけたらうれしいです。

【著者プロフィール】
藤野リョウ(ふじの・りょう)
イラストレーター、漫画家。埼玉県出身。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。都内美術予備校の非常勤講師を経て、現在はキャラクター表現を主軸に、漫画、イラスト、CMコンテ、絵画など、多岐にわたり活動。本書が初の書籍となる。